254)腎臓病との闘い

 これは、NHK明日へのことば「腎臓病と闘う」(片岡浩史 1923/10/15(日)放送)を基にしています。

 

          

 

 片岡浩史さんは、京都大学卒業後、JR西日本駅の改札業務や車掌を3年間経験。そのあとで、医学の道に進む。現在は東京女子医科大学腎臓内科医師。「腎臓ガイドライン作成委員」でもある。

 片岡医師の、腎臓病に対する、また、病気や患者に対する考え方をご紹介します。

       

       

 

 腎臓とはおしっこを作る臓器で、体にとって悪いもの(例えば「毒」)を、腎臓の中の水分に溶かして外に出す役割を担う。腎臓の働きが弱ってくると、人工透析に頼らざるを得ない。(「腎臓透析」、または単に「透析」という。腎不全を患った患者が尿毒症になるのを防ぐために、外的な手段で血液の「老廃物除去」「電解質維持」「水分量維持」をおこなう必要がある。その外的な手段を言う。)

 

 まず、70~80歳に起こってくる病気は、50~60歳から作っているということを伝えたい。

 腎臓病は肥満だけで起こるわけじゃないが、肥満は自分で治せる。もともと20代の時に平均からずれていくというのは、何かが体に起きていると思っていただきたい。

 肥満の人は、痩せると、ほんとに結果が良くなるんですね。まずはやっていただいて、継続するところでまた応援するという、私なんかは医者なんで応援団でいいと思っているんです。

 

           

 

アナウンサー:肥満と腎臓病という論文をお書きなんですね。

片岡:そうですね。肥満の人と肥満じゃない人で、つまり属性ですね、属性で医療を変えるとか、属性に基づく医療というのは、私は今いつも言っているんです。

  医学というのは、もともとは理想を追求する科学なので、みんなの共通の医療を確立するというのがあったんですね。だから、男性と女性で、また、若者と高齢者とかで医療を変えるというのはなかったんですね。

 私は大雑把に人を区分して4等分に区分するのがいいと言っているんです。

男性と女性と、あと年齢をかけた場合、50歳以上の女性と、50歳以下の男性と。

たとえば、全く若い男性と高齢者の女性とでは、体格も違うし、持ってる病気も違ってくる。一人一人が持っていたり、属しているカテゴリーに合わせて医療したいなあと思っているんです。

 究極的には個別改良というのがあるんですが、ますは、4等分ぐらいすることによって、ものを見立てていって、正確さも担保するような科学が進んでいけばいいかと思って、属性による医療を今一生懸命、世界に向けても言っているところなんです。近々そういう時代が来るんじゃないかと思っています。

アナ:それが片岡さんの今一番の研究テーマの一つなんですね。

片岡: 私は一人一人に合わせた、属性に合わせた科学というものを作ってほしいというメッセージを送っています。

 肥満は生活習慣なんですが、それが肥満として現れる。偏ってくると、平均からズレるというのが何かのシグナルだと思っていただいて、肥満のある人は、ちょっと痩せようと、テレビで行っているようなダイエットをちょっとやってみていただければ、将来何かいいことがあるんじゃないかと・・・。

 見た目というのは分かりやすいものなので、そこで意識してやっていただければいいんじゃないかと思っています。あとは、細かい病気に関しては医者に任していただくと。

アナ:患者さんに、元気になる、自信が持てるような言葉、考え方がありますか?

片岡:腎臓の患者さんには「あなたは余命が短くなります」と宣言するわけですが、しかし、それは本人にはショックだし、不安しか残さないので、「だからこそ余命を伸ばすために生活を変えましょう」と言う。そして、痩せたらいっしょに喜ぶ。

 痩せるって作業は大変なわけです。食べない作業をするというのは、なかなかできないことなのですが、痩せると検査結果が良くなるんです。

 検査結果を見ていっしょに喜ぶ。そういう作業を医療の現場でなるべくしていく。

余命が短くなる恐ろしい話ですから、それを一人で抱えるのではなくて、医者だったり、看護士さん、栄養士とか、みんなでチームを組んで、痩せるプランを考えるっていうのを考えています。

 

         

 

 感染症は治す直さないなんですけど、腎臓病は腎臓がつぶれてきた、それは何年も、10年20年もかけて、長いことかけて、それに対する流れを止めるという作業なのです。

  患者さんが自分はこんな仕事しているから止められない、できないと言ったら、医者は「そうかな」と言いながら、人それぞれぞれの目標値を変えながら行くわけです。

できる範囲でやっていく、それが答えだと思うんです。ある人は目標に達している人もいるけど、ある人の生活の中で本人がこうすると言えば、それが答えなんです。

 

   

 

 片岡さんの医師としての考え方は、患者をひとくくりではなく、その人の属性(性別、年齢、特徴等)に分けて、より詳しく診断していく。その時も、1対1というより医師・看護士等、共同体制で取り組む。患者の意見や気持ち・考え方をよく聞き、従来のやり方にとらわれるのではなく、弾力的に治療や治療の方向性を変化させていく、というものである。このような医師が増えていけばどんなに素晴らしいかと思う。