168)「ガッテン!」放送終了

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 NHK水曜日夜の長寿番組「ガッテン」が、2月2日に終わった。

 最後だからといって特別の企画もなく、次のような、立川志の輔さんと小野文恵アナウンサーの簡単な挨拶で終わった。

 

小野アナ「27年目に入りましたね」

志の輔さん「27年、お世話になりましたが、今回をもちまして最終回ということになりました。本当に長い間ご覧いただきましてありがとうございます」

小野アナ「長い間本当にありがとうございました。皆様のご健康をこれからもお祈りしています」

 

 テレビ画面には大きな垂れ幕が下がり、そこには「ガッテンできる毎日を」と書いてあった。そして、志の輔さんの「これからもずっとガッテンできる毎日を。ガッテン!」の言葉で締めくくられた。

(「ガッテン」は1995年3月から2022年2月まで続く。「ためしてガッテン」という名で始まったが、2016年4月の春季改編で「ガッテン!」になる)

 

 ツイッターなどでは残念な声が寄せられた。

「あまりにあっさり終了で、なんか寂しいです」
「ほんと普段通りの進行で最後に告知。すんなり終わってびっくりした」

「これで終わりなの?って感じだった。30年近く続いた番組なのにね...」

 

 「ガッテン」が3月で打ち切られるというような話は、以前からインターネットに出ていた。理由は、志の輔さんの体調によるものとも、NHKの方針とも伝えられ、私達視聴者には本当のところはよく分からなかった。志の輔さんが最近椅子に腰かけて司会をすることが多いので、私などは、「立っているのが無理なのかな」などとも思っていた。

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 「ガッテン」の素晴らしさは、その行き届いた準備や構成、視聴者にできるだけ分かりやすく伝えようとする内容の簡潔さ、番組運びのリズム感、歯切れの良さなどにあった。

 

 内容としては、健康に関するものと食材に関するものが多かった。例えば、

 

 「肩こり」「腎臓病」「揚げ物・フライ」「脈拍、突然死」「血糖値の最新情報」「小松菜 栄養食」「魚の油 血液サラサラ」「えごま油のパワー」「刺身、ドリップはどうして出るの?」「免疫力アップ」「認知症」「すい臓がんに超音波エコー」「ピーマンの食べ方」「血糖値が下がる、スクワット」「ひき肉」「さつまいも」「乳がん」「脂肪肝メタボリックシンドローム」「にんにく」「浮き指チェック」鰹節が激ウマ」「唾液不足」「胃液(胃酸)の逆流」「究極の長生き&寝たきり対策「人とのつながり」」「物忘れと認知症予防」などなど。

 

 「ガッテン」で取り上げられた食材がスーパーから売り切れてしまうということも、何度かあったようだ。

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 私の先輩が、「ガッテン」の解説者として呼ばれたことがあった。

 「ガッテン」は番組の中に専門家を呼んで、簡単に内容について解説をしてもらうという形をとっていた。先輩教授は「塩分と高血圧」の専門家であった。

 先輩の話によると、最初に志の輔さんやスタッフと挨拶を交わし、あとは別室で呼ばれるのを待っている。呼ばれるとスタジオに出て、志の輔さんの質問に答えたり、「塩分と高血圧」についてポイントを話す。前もっての打ち合わせは特になく、話の流れに沿って志の輔さんが引き出していくという、かなり自由な形であったそうだ。

 

 NHKが長寿番組を取りやめたり、変更したりする理由に、マンネリ化や若者の番組離れがある。

「ガッテン」の主たる視聴者が中年以上であることは事実だろう。しかし、それがどうして番組取りやめの理由になるのだろうか?

 NHKは「紅白歌合戦」を、若者中心に、大幅に変えた。そのために、中年や高齢者は付いていけずにいる。リズム中心の、けたたましい若い楽曲ばかりでは、年末にじっくり、日本の歌や日本の心情に浸りたい人々の気持ちをとらえることはできないはずだ。

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 NHKはどうして自分達が今まで押し進めてきた「伝統」に対して、自信がないのであろうか? なぜNHK独自の考え方で貫こうとしないのか?

 新しいということ、若者に受けるということ、これは新しい情報をどんどん送り込むことではなくて、各年代層が関心を持つテーマを見つけ出し、それを深く掘り下げるということなのである。

 「ガッテン」は単なる情報番組ではなかったはずだ。視聴者がテーマに興味を持ち、実際どうなのかと、自分達自身でも試して、考えてきた番組なのである。いわば、視聴者と共同で作り上げる形の番組であった。

視聴者に何の前触れも説明もなく、一方的に番組を中止するのは、番組に参加していた視聴者に失礼なのではないだろうか。