73)ラジオ体操と私

何年か前から朝6時半からのラジオ体操をしている。冬場は6時半に起きるのが億劫になってサボる時があるが、それ以外の季節では欠かさないようにしている。

ラジオ体操は、第一体操と第二体操の間に、首の運動が入る約10分の体操時間である。アナウンサーは男性二人と女性一人。男性二人には年齢差があって、最初の一声、いや一音を聞いただけで今日は年上の人だ、今日は若い人だというのがわかる。若い人は、声の音が若いというか、声が高く軽やかに聞こえる。

年上の人はベテランで、ラジオ体操の第一人者である。彼の昔からちっとも変らぬ掛け声は、ふっと軍隊の司令官を思わせる。女性のほうは日曜日担当で、最初聞いたときは、声はややおばちゃんぽいなあと思った。どのくらいの年齢の人かなと思っていたら、テレビで拝見して、あまりに若く、健康美人であったのでびっくりした。(若い男性のほうも学生さんのように実に若々しい方であった。)

ラジオ体操は今の私には欠かせないものになっているが、私にとっての効用は、筋肉強化とか力を付けるとかいうものではない。一言でいえば体調を整えるビタミン剤のようなものである。一日でも休むと、体のどこかが硬くなる。首が動かしにくくなったり、体の動きがスムーズに行かなったりする。ともかく、体調が悪くなる。

うちの夫なんかはラジオ体操を軽くみているようなところがあるが、たかがラジオ体操、されどラジオ体操である。

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体調を崩して1週間ほど、または、それ以上の期間寝こんだとする。回復を待ち、そろそろ体力的に大丈夫だろうと思って、今日からラジオ体操をしようとすると、ラジオ体操がかなりきついものであることがわかる。フーフー言って、ラジオ体操第一まではできるかもしれないが、第二は無理だ。疲れが出てくるだけでなく、貧血気味になったりする。

しかし、我慢して4、5日続けると、その辛さがなくなってくる。首の体操はもちろん、第二までやってみようかなという気になってくる。元気が出てきた証拠だ。

よく言われるように、ラジオ体操はやり方次第で、きつくもなり楽にもなる。まず、そのスピード。

年とってラジオ体操で最初に気がついたのは、体操の速度、つまり音楽の速度が前よりゆっくりになっていることだ。確かめたことがないので確かではないが、若いときはもっと体操の速度が速かったように思う。本当に少しなのだが、近年になって体操の速度がゆっくりになっている。

体操はスピードが速いと、その勢いに乗ってパッパッと済ませていけばいいので、楽になる。スピードがゆっくりになると、たとえば両腕を、前回し・うしろ回しにする体操があるが、その場合でも、ゆっくりゆっくり回すと、空中での持続時間が長くなるので、腕の回転を支える力がより多く必要になる。ゆっくり長く一つの状態を保つのは腕の付け根やひじにも力が入る。

NHKの担当者は老人にも力がつくように、ラジオ体操のスピードを落したに違いない。昔は、子供達の参加が多かったが、今では高齢者の参加も増えている。

ラジオ体操はちょっとしたやり方で「しんどさ」が大きく違ってくる。

もう一度腕の回転を例にとるが、腕を自身の前のほうで小さく回すのと、腕全体を少し引いて、胸を張るような形で、したがって、腕を真横、または少し後ろ気味のところで回すのとでは、効果が変わってくる。後者のほうがかなりの力が入るので、本格的に腕を回したという気になるし、胸を十分に開くので、腕の付け根の部分が伸びて、一日中気持ちが良い。

最初の深呼吸の次の、腕を振って両足の屈伸をするのも、やり方で効果が違ってくる。

足をできるだけ曲げること、伸び上がるときは思い切りかかとを持ち上げて、つま先立ちをする感じで伸ばす。姿勢はできるだけしゃんとしてまっすぐに保つ。

私はこの屈伸運動で、両手を広げるときは手のひらはパー、胸元で組むときは手のひらはグーにする動きを付け加える。きくち体操で有名な84歳の菊池和子先生がテレビでおっしゃっていたように、このグーパーもいい加減でやるのではなく、メリハリを付けて、大きく開くときははっきりと大きく開き、握るときはぐっと小さく握るようにしたほうがいいらしい。

このメリハリはラジオ体操全体に言える。メリハリを付けてひとつひとつの動きをすると、ラジオ体操が体調を整えるビタミン剤になっていることがよくわかってくる。

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ラジオ体操では、第一と第二の間に、首の運動が入ることは冒頭に紹介した。前後左右に首を曲げる、伸ばす、回すなどの運動であるが、これがまた、凝りやすい首には程よい運動になる。首の運動のときに音楽が入るのだが、現在は「富士は日本一の山」の音楽がかかっている。以前冬場には「もういくつ寝るとお正月」がかかっていた。こんな短い首体操に添える音楽にも工夫をこらしているのがわかる。

 

今現在はラジオ体操をするために早起きすることが苦になっていないが、これから月日が経って、体が重くなって弱くなって、今日は第一体操だけ、今日は休もう、今日も休もうとなっていくのが一番恐ろしい。ラジオ体操は自分自身の健康のバロメーター、これからずっと何年も何年も続けていけることを望んでいる。