87)ルーチンワークについて

野口聡一さんはせまい宇宙ステーションに5か月半も滞在していた宇宙飛行士である。この新型コロナウイルスで長期に外出自粛を強いられている日本人に対して、何かアドバイスをしてほしいというNHKのインタビューがあった。野口さんはいつもとかわらぬ茫洋とした表情で、宇宙ステーションでの生活を語った。

「まず朝起きたら決まったことをする、自分なら、水を一杯飲むとか。まずルーティーンのことをすると、落ち着きます」

「そして、目の前の仕事を一生懸命やる。それが大事でしょうね」

朝起きたら、迷ったり悩んだり落ち込んだりせずに、まず自分がいつもやっていること(特にない場合は意図的に作っておく)をやって、それから、目の前にある仕事を一生懸命する。

さすが、狭い宇宙ステーションで生き延びてきた野口さんだけあって、考えは現実的で、大地にしっかり根差しているように思える。

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ルーチンワークがいかに心を落ち着かせるかは、私自身も身をもって感じる。最近は朝5時に起きる。朝ご飯作りを半分(味噌汁とサラダ作り)して、顔を洗って身だしなみを整え、5時45分ごろ散歩に出かける。約30分。6時半からラジオ体操、次に、聞き流すだけだが、ラジオの基礎英語を聞く。7時に台所に戻り朝ご飯の仕上げをして、7時半に家族で朝食をとる。

ここまでが朝起きてからの私のルーティーンワークである。冬場はなかなか起きられなくて、起床が6時~6時半になる。しかし、起床後のルーティーンワークは夏場と大体同じである。

起床後のこの時間はほとんど何も考えない。ただただルーティーンワークを一生懸命こなす。面倒くさいこともあるが決して手を抜かずに、淡々とこなす。淡々とこなすうちに、やりたくない気持ちや、サボりたい気持ちがだんだん薄れていって、「ああ、今日も頑張ろう」と思えてくる。

毎朝のルーティーンワークが体に刺激を与え、指先までエネルギーを届け、気持ちまで明るくしてくれるようだ。

うちの夫はアルコールが好きなので、冷蔵庫にビールでもあれば、夜遅くても飲んでしまう。また、映画が好きなので、夜のシネマを見ながらビールを飲むのが最高のようだ。

夫も、最初は私といっしょに朝5時に起きていた。私と違うのは夫は散歩の代わりにジョギングをすることだ。80近くになっているから私は反対するのだが、「山に登りたい」とか「スキーをしたいから」とか、つまり「体力作りのため」と言って走り出す。運動を急にやるので、また、適当にアルコールと映画を楽しむために、彼の朝のルーティーンはなかなか定着しない。三日坊主と言われたくないので、いつも3日は続くが、5日目6日目位で怪しくなる。5日目6日目位になるとバテてしまうのだろう、朝なかなか起きてこない。

 

シニアが朝の一定時間にルーティーンワークをすることは、シニア自体の閉塞感から抜け出せる良いやり方であるように思う。

朝起きたら自分の部屋の雨戸やカーテンを開ける、ベットを整える。散歩に行く、ラジオ体操をする。朝ご飯作りのどれか一つでも担当する。食後は連れ合いと交互で茶碗を洗う、流しを片付ける、などなど。

最初は面倒なときもあるが、それらに徐々に慣れて、自分のルーティーンワークになっていく。ルーティーンワークが身に付くにつれて、脳も体も、そして心も動き始める。

ルーティーンワークを見直し、ルーティーンワークを活性化させることで、何かが生まれてくるような気がしてならない。

 

もちろん、シニアにとって、このルーチンワークを終えてから何をするか、何かすることがあるかが、もっと重要になってくるのではあるが・・・。