91)シニアからシニアへ(奉仕の心・心の強さ)

シニアへの応援メッセージを考えていると、まだいくつか心に浮かぶ。

「趣味」「追い求める」の他に、「奉仕の心」や「心の強さ」なども老後を、特に一人で生きていくためには必要なことであろう。今回はこの二つについて考えたいと思う。

 

人は人に、どんな小さなことでもいいが、親切をすると自分が幸せを感じるという。

もし、あなたが息子か娘家族と住んでいるとしたら、週2回曜日を決めて、朝ごはんを作る。毎日できればそれに越したことはないが、週1回でも2回でもいい。無理はしない。

和食、パン食を問わず、毎朝必ず味噌汁と玉子焼きを作る。上等の味噌を使えば、味噌汁は必ずおいしくなる。おばあちゃんの味噌汁がおいしければ、パン食の孫達も喜んで飲む。(子供は大人より味について敏感だ。)

孫が大きくなってお弁当が必要になってきたら、週2回ぐらい、これも何曜日と何曜日と決めて、お弁当を作ってみる。冷凍食品を使ってもいいし、シャケの塩焼きにブロッコリーの茹でたのだけでもいい。

私が高校時代好きだったのは、ご飯の上に醤油のきいた鰹節をのせ、その上に卵の薄焼きの細切りがのっかっている弁当。醤油と鰹節と細切り卵のハーモニーが絶妙で、食が進んだ。

これなんかは作り方が簡単だ。絶対においしいので、いつもこれを作っても喜ばれるはずだ。

男性のシニアでも、料理ができる人は朝食作りか弁当作りに挑戦してはどうだろうか。

週2回、必ずシニアがやってくれるとなると、ママさんは有難いにちがいない。

 

朝ご飯作りや弁当作りができない場合は掃除でもよい。週1回黙って掃除機を持ち出して、家中を掃除する。若い人は掃除が苦手の人が多いので、家族に喜ばれるにちがいない。

住まいが一戸建てなら、毎朝外回りの枯葉の掃除だけでもよい。

 

ともかく、地味でよいから、一つだけやれそうなことを見つけて毎日やってみる。

毎朝定時に起きて、身の回りをちゃんとして、散歩に行ったりラジオ体操をして、週2回、奉仕活動のようなお手伝いをして、そして週1回、趣味のために外に出る。これらを、ルーチンワークとして、淡々と繰り返し続ける。

その間には病院通いがあったり、自分の洗濯や片づけがあったりするが、もちろんそれは今まで通り続ける。

こんなふうな毎日で、結構忙しく、充実してくるのではないだろうか。

 

次は、気持ちを強く持つということについて考えたい。強いおじいちゃん・おばあちゃんはむしろ嫌われる。私の言いたい強さとは、人に強いところを見せるというのではなく、心の中で気持ちを強く持って、うしろ向きにならないということである。

ある新進の小説家が書いていたが、作品を応募する場合も、「あまりうまく書けていない。また駄目だ」と思って応募するのではなく、「やったるで。人が感動するすごい作品を書くぞ!」という強い気持ちで臨むことが大事だということである。

仮に朝ごはん作りをして、あまりおいしくできなくても、「今日はあまりうまくできなかったけど、今度はおいしく作るからね、アハハ・・」と言える強い心である。

朝ごはん作りに臨む前に、「今朝はおいしい玉子焼きを作るぞ! 孫たちがびっくりするような玉子焼きを!」という前向きの心である。

威張ったり自慢したりするのはあまりお勧めできないが、「できるかな」「できないかもしれない。」「どうしようか」「やめとこうかな」ではなく、「よし、自分しかできないものを作ってみせるぞ!」という勢いのある強さである。

たぶん小説なら、そうした前向きの姿勢が文章の中にも反映されて、それが審査員にも伝わることがあるかもしれない。

ともかく、人の反応を待つのではなく、人の反応を自分が変えてやるというぐらいの心意気を持つことである。

正直を言うと、私自身すぐうしろを向いてしまう人間なので、偉そうなことは言えないのだが、自戒を込めて、また、自分を鼓舞するために、そういうシニアが増えてくれることを心から期待している。