195)孫との会食

 車で2,30分のところに娘夫婦が住んでいる。娘夫婦には2人の子供がいる。男21歳と女18歳。

 孫が小さい時は、保育園のお迎えや、夏休みの一時預かりなど、祖父母としていろいろ手伝った。孫可愛さのあまり、我々のほうから手伝いを申し出ることもたびたびあった。

 季節ごと、正月、4月、夏休み、秋と、年に数回は2家族いっしょに外食を楽しんだ。焼肉が多かったが、シャブシャブのときも、もちろん、家で寿司をとったり、揚げ物を作ったりして、楽しむことも多かった。

 孫が大きくなってくると、それぞれが忙しくなり、日にちを合わせるのが難しくなった。誰かが都合が悪くなる。来られなくなる。しかし、それでもなお、日程を合わせて集まってきた。

 

 皆がそろって集まることは、それはそれでいいのだが、私の心の中に、孫と祖母(私)だけで、どこかへ食べに行きたいなあという気持ちが起こってきた。

 特に話があるというわけではない。ただ、2人の孫を前にして、彼らの食べっぷりを見てみたいような気がした。そんなことを漠然と思っていただけなのに、そして、漠然と娘に言ったら、話がどんどん進んでしまった。

 

        

 

  回転寿司店での会食は、8月6日土曜日に決まった。

 私はその週の前半に出かける用事があった。運悪く、日照りと高温で、熱中症まがいの症状に襲われて、その日の夜38度7分の熱を出してしまった。熱は1日で引き、症状も収まったから良かったのだが、孫との約束を反故にすることだけは絶対に避けたかった。子供は「約束を破られる」ということに敏感で、一度破ると「この人は約束を守らない」の烙印を押されてしまう。私としては、いつまでも信頼されるおばあちゃんでいたかった。

 回転寿司屋は混むので、夕食には早めの4時15分集合となった。その時間ではたいてい席が空いている。       

      

 席は入口のロボット君が決める。19番座席が我々の席である。孫たちは寿司の流れて来るレーン側に座る。私は通路側に座る。

      

 私は何もする必要はなく、孫たちがお箸やお茶、ナプキンなど準備してくれた。

 孫たちは私に構うことなく、どんどん注文していく。流れているお皿をとるのはまれで、ほとんどはモニター画面で注文をしていく。

 

 孫が中学生のころは、2人ともはサーモンが好きだった。サーモンばかり注文していた。

          

もっと小さい時は、トロとかマグロが好きで、孫たちの親が予算がかさむのを恐れて、最初にうどんを食べさせていた。おいしい、温かいうどんが小鉢で来るので、孫たちにはそれを1~2杯食べさせて、お腹が落ち着いたころから、お寿司の注文をさせる。

     

 今回21歳と18歳の孫が最初に注文したのは、「はまち」であった。「はまち」は適度に油がのっていておいしい寿司ダネだが、どちらかというと、大人向きの食材だと、私は思っていた。最初に4皿も注文するのは意外であった。

 

 

  

 

「孫たちも大人になったんだなあ」と感慨にふける。

 

 孫息子は、そのあと、うどんとラーメンを食べ、また寿司に戻っていた。孫娘のほうも、寿司に加えて、うどんや茶碗蒸しを注文していた。

 

        

 

「うどん」を食べろとは一言も言っていないのに、麺類を食べるというのは子供のころの習慣が残っているのだろうか。

 孫たちは一応空腹がおさまったのか、「ちょっとペースを落として」とか何とか言って、その間にデザートを注文していた。チョコアイスとかバニラアイスとか。そして、しばらくすると、また、寿司に戻った。

       

 冷房がどんどん効いてきて、最初は気持ちのよい涼しさだったのだが、今は寒くなっている。私は1枚余分にシャツ持って来ていたが、子供達は半袖のTシャツ1枚である。「持って来たTシャツを着るか」と聞いたが、2人とも「要らない」と言った。

         

 最後は孫娘は、体が温まるためにあおさ汁を注文した。昔のあおさ汁は大きなお椀にノリが一杯浮かんでいたが、今は普通の味噌汁とあまり違わない。お椀も小さい。孫息子は、チーズ天ぷら寿司を注文していた。これも温かいものだ。2人とも何も言わないが、寒かったにちがいない。

 

 子供達とは大したことは何も話さなかった。好きな女の子の話とか男の子の話とか、出て来てもよさそうだが、2人とも全然興味がないようだった。孫息子が無口なほうで、自分から話すことはほとんどない。いろいろ親切にしてくれるのだが、私のほうが何度も聞いて聞いて、ようやく話が出てくる。だんだん面倒になって、こちらからあまり聞かなくなった。孫娘はおしゃべり。何でもしゃべって、間を持たせてくれる。

 

 ただそれだけの孫と祖母の会食だった。孫が誰にも遠慮せず、私も一切注文を付けず、食べたいものを食べたいだけ食べて、そのまま会食は終わった。

    

 孫たちが最後に立ち上がって「ありがとう」と言い、笑顔で握手し合ったのが、とても嬉しかった。それだけだった。親バカというべきか、祖母バカというべきか。