前回の宿題は、次のabがどう違うかを考える問題でした。
a.我々は令和の時代に生きている。
b.我々は令和の時代を生きている。
「a.令和の時代に生きている」はその時代に存在しているという意味で、「に」を使って静的なとらえ方をしています。一方、「b.令和の時代を生きている」は「を」を使って、令和の時代を積極的に行動的に生きていることを表しています。したがって、bは動的なとらえ方をしています。
では、今日のテーマに移ります。ここから富士山が見えたとします。その富士山についていろいろ述べることができます。
A 富士山は日本で一番髙い。
富士山はかなり険しい。
富士山はとてもきれいだ。
富士山は日本にある。
富士山は誰でも登れる。
これらの文は次のような言い方をすることもできます。
B 富士山は日本で一番髙い山だ。
富士山はかなり険しい山だ。
富士山はとてもきれいな山だ。
富士山は日本の山だ。
富士山は誰でも登れる山だ。
Aの文は富士山について言いきりの形で述べていますが、Bはすべての文が「山」にかかる形(「山」を修飾する形)で述べています。(日本語は通常、前の語や文がうしろの語を修飾します。)
髙い→高い山 険しい→険しい山
きれいだ→きれいな山
日本にある→日本の山
誰でも登れる→誰でも登れる山
一つの語や文が一つの語(名詞)を修飾する仕方にはいろいろあって、「高い」のように「~い」でつながるもの、「きれいだ」のように「きれいな」でつながるもの、「日本(にある)」のように「~の」でつながるもの、「誰でも登れる」のように文そのままでつながるもの等があります。
今回はこの中で「日本の山」のように「名詞+の+名詞」の使い方を勉強します。
ここで、かの有名な「男はつらいよ」の寅さんに、「の」を使って自己紹介をしてもらいましょう。
「私は、東京の葛飾(かつしか)の柴又(しばまた)の帝釈天(たいしゃくてん)で産湯を使い・・・」
「の」がいくつか出てきますね。このように、場所を詳しく言いたいときは、大きい区画からだんだん小さい区画へ「の」を繰り返すといいようです。(例:「北海道の東旭川町の倉沼の旭山動物園」「奈良県の奈良市の西大寺駅の前の広場」)
「~の~」にはいろいろな意味用法があります。皆さんは次の「~の~」が何を表していると思いますか。(2つずつ同じ意味用法の「の」を示してあります。)
(1)弟の自転車、私のメガネ→
(2)高校の先生、交番のおまわりさん→
(3)日本の車、トヨタの車→
(4)経済の雑誌、営業の仕事→
(5)来年の10月ごろ、今朝の6時半→
(6)社長の寺田さん、友達の幸子さん→
まず(1)は、「弟が持っている自転車、私が所持しているメガネ」なので、「の」は「所有」を表します。(2)は「高校で教えている先生、交番で勤務しているおまわりさん」なので「所属(先)、(3)は「日本・トヨタで作られた車」で「生産地・生産場所」の意味、(4)は経済についての雑誌」「仕事の内容は営業」なので、「物事の内容」を表していますね。
(5)は「時間」、(6)は「社長である寺田さん」「友達である幸子さん」となって、「である」つまり「社長イコール寺田さん」となって、「同格」を表しています。
この他にも、(7)「花の都パリ」「茶色の小瓶(こびん)」「突然の話」のように「性質・状態」を表す場合、(8)「3匹の子豚」「右端の人」のように「数量・位置」を表す場合もあります。
では、次の「の」は何を表しているでしょうか。
(9)社長の説明、若者の自殺
(10)マンションの建設、借金の返済
(9)は「社長が説明する」「若者が自殺する」の関係になるので、「~の」は「主体・主語(誰が/何が 説明する/自殺する)」を表しています。(10)は、「マンショを建設する」「借金を返済する」のように、「目的(何を 建設する/説明する)」を表しています。
また、「東京での出来事」「社長令嬢との婚約」「宇宙からのメッセージ」のように「の」の前には格助詞(ここでは「で」「と」「から」)が来ることもあります。
では、次のaとbは同じ名詞が出ていますが、それぞれどんな意味でしょうか?
例を参考にして、皆さんで考えてください。
例 a.宮殿のバラ
b.バラの宮殿
説明:aの「宮殿のバラ」は宮殿に咲いている、または宮殿が所有している「バラ」の意味を表す。bの「バラの宮殿」は宮殿がバラで包まれている、バラいっぱいの性質・状態を表す。
- a.おじさんのヒゲ
b.ヒゲのおじさん
説明:
- a.上皇后のご病気
b.ご病気の上皇后
説明:
- a.子ども達の学校
b.学校の子ども達
説明: