207)シンママさん

 先日「シンママ」という言葉を聞いた。「シンママ」だから、何か新しい方向性を持った「新ママ」さんなのかと思っていたら、「シングルマザー」の略だった。

「シンママ」、すなわち、母子家庭における「ひとり親」として子育てする母親を指す。

         

 母子家庭率は全体の1.5%(小学校のクラスに、1~2人いる)程度で、シングルマザーになった原因は、主に夫の暴力DVが多いという。

DVとは「相手を支配すること」で、殴る、けるといった肉体的な暴力だけでなく、言葉の暴力、金銭的暴力、精神的暴力などがある。

         

 言葉の暴力では、「お前はバカだ」「馬鹿だから俺が躾(しつ)けてやっている」「お前はダメな人間だ」などの暴言を投げかける。金銭的暴力としては、生活費を渡さない、渡しても生活できないような最小限の金額であったりする。また、友達に会わせない、自由を与えない、毎年妊娠させて、逃げられないようにする、など、縛られた状態にする。

 そのような状態から妻は逃げようとする。しかし、養育費をもらっているのは1割の妻に過ぎない。子供を抱えて、保育所に入れない。資格もスキルもない。仕事があっても、よくて派遣。子供が小さいので、就職できない。 

        

 シンママ大阪応援団代表理事の寺内順子さんは、大坂社会保障推進協議会事務局長でもある。

ご相談があれば、社会的制度につなげたり、ご紹介したりする。それだけでは済まない場合は、弁護士や司法書士につなげる。プラス食糧支援も行う。また、シンママがいつでも集まってこられるように、「実家」と称して「集まり場所」を確保した。

 

  コロナ禍で学校が休みになり、子供が家にいる機会が増えた。シンママさんも仕事が減って、収入が減る。時給で働く人が多いが、働く時間そのものが減る。

 そんな中で、直接、食べ物を送ってほしい人達が増えている。

    

 

 応援団としては、寺内さん達は元々食糧支援をやっていた。最初は月1回。そして、今は月2回。じゃかいも、玉ねぎ、缶詰、そして、衣類、冬用洋服、お布団がないこともある。

      

 暖房がないところへは、湯たんぽ、カイロなど。皆からスぺシァルボックス(Special box特別な箱)と呼ばれる段ボール箱に詰めて支援する。最初500程度であったのが、現在では1070世帯に送る。

 

 支援先には、毎月何も言わないで届く。毎月毎月届く。

        

 スぺシァルボックスを受け取った家族の感謝は、お応援団に届く。

「誰からも忘れられ、見捨てられたような気持でいた時、何にも責めず送ってくれるのが嬉しい。」「食料サポートを続けてくれているとうことが、すごい支援になる。」

 

 子供からのお便りもある。毎月夢のようなボックスが届くのが、子供達の楽しみになっている。

子供達は、「来るかなあ」と待っている。

寄付金で京都への一泊旅行もできた。シンママ家族は、楽しみのためにお金を使うことの経験がない。大阪のUSJも行ったことがない。スぺシァルボックスと「実家」の運営に力を入れている。

 

 「ママさんたちと打ち解けるコツはなんですか?」と聞かれた時、寺内さんは答えた。

        

「やっぱり食べることですね。いっしょに作ったり、この間はじゃがいもでコロッケを100個作った。ああいうことが楽しい。こういう集まりから悩みとかが出てくる。」

「改まって、「お悩みはなんですか?」からは出てこない。私達はご飯を食べようということを大事にしている。」  

       

 寺内順子さんは、『「大丈夫?」より「ごはんを食べよう」』(2020秋)というレシピ本を作ったが、「シンママ」は過去には十分に食べられなかった人も多く、食事会などをとても喜ぶという。

 「シンママ」は10代後半から40代。

 何か悩みや相談があった時、まずは「食べてください」と勧める。

        

 彼女たちはスイーツが大好き。特に手作りのケーキが大好きである。

「私のことを思ってこのケーキを焼いてくれた」という思い入れがある。また、ケーキが誕生日を連想させる。

 

 シンママさん達の好きな物は、豪華な料理というより、土鍋で炊くご飯、おにぎり、玉子焼きであったり、味噌汁であったりする。今まで、こういうものを食べてきていなかったのではないか。

    

 

 中でも彼女たちが好きなものは、鶏のから揚げである。鶏のから揚げを何キロ作っても、全部食べる。2キロでも3キロでも食べて帰る。