前回の答えは「(1)よ、ね (2)よ、よ」でした。「ね」は共感を表すので、話し手はその事柄について知っている場合に使います。それと反対に「よ」は、相手が知らないだろうと思う時に使います。知らせたり、教えてあげたりするときに使います。
さて、今日は日本語の「形容詞(けいようし)に」ついてです。
動詞(どうし)は「行く、食べる、寝る、勉強する」などのように、主に動作を表します。一方、「いい、悪い、大きい、小さい、暑い、寒い、元気だ、親切だ」などは、ものごとの形状や性質、また「痛い、悲しい」のように話し手の感情・気持ちを表します。
次の中から形容詞を探してください。
「遠い、たいてい、高い、太い、箱、つくえ、静かだ、沈む、好きだ、増える、多い、減る、丈夫だ、強い、きれいだ、有名だ、ゆっくり、ほとんど、上手だ、走る、歩く」
形容詞は「遠い、高い、太い、静かだ、好きだ、多い、丈夫だ、強い、きれいだ、
有名だ、上手だ」です。
皆さんが奈良の東大寺へ行ったとします。そして、そこで大仏を見たとします。正式に廬舎那仏(るしゃなぶつ)と呼ばれ、世界最大の木造の仏像と言われています。日本人は仏像の大きさに感嘆し、それを誇らしく思います。
海外の研修生受け入れの仕事をしていた夫は、研修生を東大寺に連れて行くことがありました。タイやフィリピン、インド、ベトナムなどから来ているアジアの人達が多かったので、さぞ東大寺の仏像の大きさに驚いてくれるかと期待していました。
ところが、彼らが大仏を見て発した言葉は “Nothing!” でした。日本語に訳せば、「何もない!」「何でもない!」です。
後日夫婦でタイへ観光に行くことがありました。そして、そこで金色に輝くいくつかの寝仏像を拝顔しました。頭の先から足の先まで、何メートルもある仏像です。タイには、そういう寝仏像がたくさんあって、こんなに大きな仏像を見ているアジアの研修生にとっては、東大寺の大仏は、全く “Nothing!” であることがよく分かりました。
形容詞は「大きい、小さい」「長い、短い」などの物事の形状、「暑い、寒い」「甘い、からい」などの物事の性質、「悲しい」「うれしい」などの感情を表します。奈良の大仏の大小でも分かるように、もし、高い山に囲まれている人々には、富士山などは低い部類に入るかもしれないし、日本人が「暖かい」と思っても、その気温は彼らには「寒い」かもしれません。
このように、形容詞で表される物事の形状・性質は絶対的なものではなく、あくまでも相対的なものなのです。
日本語の形容詞は形の上から2種類に分けられます。
「い形容詞」(本来の形容詞:語末に「い」が来る)
大きい、おもしろい、いい、悪い、など)
「い形容詞」の活用は次のようです。
丁寧形
肯定・非過去:大きいです
否定・非過去:大きくないです(大きくありません)
肯定・過去 :大きかったです
否定・過去:大きくなかったです(大きくありませんでした)
普通形
肯定・非過去:大きい
否定・非過去:大きくない
肯定・過去 :大きかった
否定・過去 :大きくなかった
「な形容詞」(漢語由来の形容詞:元気だ、きれいだ、有名だ、静かだ、親切だ、など。「きれい」「有名(ゆうめい)」「愉快(ゆかい)」などは「い」で終わっていますが、「な形容詞」です。)
丁寧形
肯定・非過去:元気です
否定・非過去:元気じゃ(では)ありません
肯定・過去 :元気でした
否定・過去 :元気じゃ(では)ありませんでした
普通形
肯定・非過去:元気だ
否定・非過去:元気じゃ(では)ない
肯定・過去 :元気だった
否定・過去 :元気じゃ(では)なかった
これらの形は、形容詞が述語(主語を受ける後ろの部分)に来て、言い切りの場合に用います。
一方、「い形容詞」「な形容詞」が名詞を修飾する場合は、次の下線部分のようになります。
い形容詞:このりんごは赤い。→赤いりんごをください。
このマンガはおもしろい。→今、おもしろいマンガを読んでいる。
な形容詞:この人は親切だ。→親切な人に出会った。
この花はきれいだ。→きれいな花を飾ろう。
「い形容詞」は名詞を修飾する場合も、そのまま「~い」+名詞の形で修飾します。一方、「な形容詞」は、「だ」が「な」に変化して、「~な」+名詞の形になります。
では、ここで問題です。
1)「いい」という形容詞があります。「いい・悪い」の「いい」です。「いい」は「い形容詞」です。( )に適当な形を入れて、活用を完成させてください。
普通形
肯定・非過去:いい
否定・非過去:よくない
肯定・過去:( )
否定・過去:( )
丁寧形
肯定・非過去:いいです
否定・非過去:( )(よくありません)
肯定・過去:よかったです(よくありませんでした)
否定・過去:( )(よくありませんでした)
表の中で「非過去」とあるのは、「過去じゃない」という意味です。
日本語では「過去」は「~た」(例:きのう寒かった)」で表せますが、「現在」と「未来」は同じ形を取り、「~る」(例:毎日寒い、明日も寒い)となります。そして、「現在」と「未来」を合わせて、「過去」に対して「非過去」と呼びます。
(これについては次回勉強します。)