174)★ #日本語文法 ものがたり6★「助詞」②

         

今回は助詞の中で、文の骨格を作る格助詞について考えます。

      

私の子供が小さいころ、小さいといっても小学生低学年のころですが、次のようなことを言いました。

 

  • 「お父さん 僕 プレゼント あげた。」

 

私はそれを聞いて、誰が誰にプレゼントをあげたのかが分からなかったので、息子に聞きました。すると、息子は「お父さんが 僕に プレゼントを くれた」を言いたかったようでした。

       

英語では「あげる」も「くれる」も区別せずto giveを使いますが、日本語では違います。「誰かが自分にくれる」ことを言いたい時には「くれる」を、それ以外の時には「あげる」を使います。

 

*1 誰かが 私/私達に 〇〇を くれる

    *2 誰か/私がが 誰かに 〇〇を あげる

 

この年齢の子供達はたいてい「あげる」と「くれる」を混乱します。授受(やりもらい)関係の表現が頭の中でまだ発達していないからです。子供達はいつも「あげる」を使ってしまいがちになります。

しかし、一方で、もし息子が次のように格助詞を正確に使えていたら、「あげる」と「くれる」を間違っていたとしても、私は息子の言いたいことが大体分かったのではないでしょうか?

 

  • 「お父さんが 僕に プレゼントを あげた。」

 

このように格助詞が正しければ、文の骨格が分かるし、文全体の意味が分かりやすくなります。

会話では、「どこ(へ)行くの?」「何(を)してるの?」「ジュース(が)飲みたい」「桜(が)きれいねえ」というように、格助詞がしばしば省略されます。

しかし、メールや手紙、文や文章の中では、意味の明確さが大事になってくるので、曖昧さを引き起こす格助詞の省略はほとんど行われません。

 

格助詞は、研究者によって少し異なりますが、「が、を、に、で、へ、と、から、まで、までに、より」の10個あります。

      

では、まず、次の問題をやってください。これは外国人学習者にもよくやらせるものですが、並んでいる語を使って、文を作ってください。正しく助詞を使ってください。

この問題は、語順がバラバラでも、格助詞が入ることで、文の骨格ができ内容のある文が作れるという練習です。

 

問題

例:住んでいる 駅の近く 私は 

→私は駅の近くに住んでいる。         

             

(1)ある パン屋 駅の近く 

 

    

        

(2)行ってみた きのう そこ

 

(3)あった おいしいパン そこには たくさん 

 

          

 

(4)会った 偶然 友達 そこ 

 

(5)寄った 飲んだ 近くのカフェ そのあと コーヒー

 

        

(6)おしゃべりした 3時 2時 1時間 友達

       

(7)散歩した 2人 公園 あとで

 

        

 

できましたか?答えは次のようです。次の答え以外にもできたかもしれません。

答:(1)駅の近くにパン屋がある。(2)きのうそこへ/に行ってみた。(3)そこにはおいしいパンがたくさんあった。(4)そこで偶然友達に会った。(5)そのあと近くのカフェに寄って、コーヒーを飲んだ。(6)2時から3時まで1時間友達とおしゃべりした。(7)あとで2人で公園を散歩した。

 

では、次にそれぞれの格助詞の、主な意味と役割を並べてみます。格助詞は「名詞+格助詞」の形をとります。問題に出てきた格助詞があるでしょうか?

 

【が】

1)動作や状態の主語      

   (1)子供が遊んでいる。桜がきれいだ。

2)状態の対象(主語)を表す(主に「~は~が・・・」の形をとる。)

  (2)私はパンダが好きだ。

 

【を】

1)動作の目的を表す

  (3)新聞を読む。

2)通過の場所

  (4)公園を散歩する。角を曲がる。

3)出発点・起点

  (5)部屋を出る。バスを降りる。

 

【に】

1)存在・所有の場所

  (6)リビングにテレビがある。彼女に子供いますか?

2)時を表す

  (7)午前5時に起きる。

3)方向・着点

   (8)九州に行く。

4)移動の到着点

   (9) タクシーに乗る。ソファに座る。

5)動作・作用の対象・相手

  (10) 人に会う。

  (11) 友達に手紙を書く。

6)動作・作用の源

  (12) 小林さんに時計を借りる。

       (13) 父親に殴られた

7)移動の目的

       (14) 買物に行く。

9)割合の基準

       (15) 1か月に1回出張がある。

 

【で】

1)動作・作用の場所

  (16) すし屋でラーメンを食べる。

2)手段・方法・道具・材料

  (17) はさみで切る。

  (18) 紙でできている。

3)範囲

  (19) 沖縄では老人が元気だ。

4)限度・期限

  (20) 1週間で書き上げる。

  (21)  1一万円で買った。

 

【へ】

 動作が向けられる方向・場所・相手

  (22) ハワイへ行く。

  (23) 友達へ手紙を書く。

 

【と】

1)相手方の人やものを示し、「~といっしょに」を表す

  (24) 家族と食事をする。

2)引用

  (25) 彼女は今日来ないと言っていた。

  (26) アラビア語は難しいと思う。

 

【から】

1)出発点・時間の起点

  (27)毎朝6時半から体操をする。

(28) アパートから学校まで一時間かかる。

2)受け取り動作の相手・出どころ

  (29) 小林さんから時計を借りる。

7)原料

  (30) しょう油は大豆から作る。

 

【まで】

時間・物事の限度

  (31) セールは明日までやっています。

  (32) 友達を空港まで送っていった。

 

【までに】

事態の実現する期限

  (33)明日までにお金を払い込んでください。

 

【より】

1)起点・出どころ

  (34) ロシアより愛をこめて

2)比較

  (35) 歌舞伎より狂言のほうがおもしろい。