173)回転焼き

 朝ドラ「Come come everybody」もそろそろ終わりが近づいている。中~後半になって、物語がフラフラしているような気がしていたが、主人公ルイが思いついた「回転焼き」屋さんも軌道に乗り、また、ルイも母親との再会ができそうなので、物語としては何とかなりそうな気配ではある。

 店は大月の回転焼き屋さん。あの丸い形をして中にあんこが一杯入っている、熱々のおまんじゅう。「大月」の焼き印がなかなかかっこいい。

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 あの「回転焼き」は各地では、さまざまな呼び名があるらしい。

 子供のころ、昭和30年代ころだが、私の住む大阪(北河内)では「回転焼き」と呼んだ。屋台で作って売られることが多かったのだが、くるくる回して作る感じがあったので、回して焼くから「回転焼き」と呼ぶことに違和感はなかった。

 しばらくして、小豆のあんこではなく、白あんが中に入った「回転焼き」が登場した。白あんの豆は小豆よりはるかに大きかった。「今川焼き」って言うから、今川っていうところで作り始められたのだろうと思っていたが、「今川」がどこか知らないままだった。

(つい最近にインターネットで調べてみた。「今川焼き」には、今川焼きを初めて発売した場所にちなんだという説があり、江戸時代中期ごろに神田今川橋の近くにあった店で、桶狭間の戦いをもじって、「今川焼き」と命名して販売したとか。桶狭間で敗れたのが今川義元。) また、同じ今川氏つながりで、今川氏の家紋の二つ引両の形が由来になっているという説もあるとのことである。)             

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 主婦向けテレビ番組「あさイチ」で、いわゆる「回転焼き」が各地ではどう呼ばれるかを聞いたところ、30分ほどで100通以上のお便りが寄せられたという。視聴者(主婦層、若いママさん達)の関心は高いと言えるし、各地に各地なりの呼び方があるようだ。

 インターネットに出ていた岸江信介氏(奈良大学文学部教授)の調査資料「回転焼の名称に関する調査研究」を拝借すると、おおよそは次のようになるらしい。岸江氏は諸方言をテーマに研究しておられる。

 

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 この地図でかなり頭が整理されるが、同じ地方にも呼び方が混在していたり、商品名が変化したりして、一筋縄にはいかないようだ。

栃木、岡山などでは「夫婦まんじゅう」が変化したと思われる「ふうまん焼き」、愛媛、長崎では「太鼓まん」「太鼓まんじゅう」、三重では「天輪焼き」と呼ばれることもあると言う。私の夫は山梨出身だが、普通には「太鼓焼き」「太閤焼き」と呼んでいたようだ。「たいこう(太閤)」は「たいこ(太鼓)」の「こ」が伸びただけなのかもしれない。

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 何年前からか、ホームセンターが入口付近に屋台を設置し、回転焼きを売るようになった。あんこがいっぱい入っていて、味も値段もそこそこだが、名前は「あじまん」である。山形県の会社が製造販売している。岸江氏の地図通りである。

 

 世間では、あんこの代わりにカスタードクリームなどが入った洋風なものも出回っている。冷凍食品にも回転焼きがあって、5つ300円ぐらいで手に入る。チンで熱々に戻せるし、味もそこそこなので便利である。

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 ここで、子どもの頃の思い出を一つ。

 

 あの頃の家族はたいていの家が子だくさんで、我が家も姉が3人、弟が1人で、私を入れると5人姉弟であった。

 

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 ある日のこと、姉弟回転焼きを買おうということになった。姉たちがおごってくれると言う。こういう場合は妹や弟が買いに行くのが常であったが、小学校5、6年生のころの私は素直でなかったというか、反抗期だったのか、買いに行くのがどうしても嫌であった。

 姉たちは私が行くのを今か今と待っていたが、頑固者の私は「回転焼き、いらない!」と言い張って、結局買いに行かなかった。

 姉の誰かが買いに行ったのだろう。

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 しばらくして、私にも熱々の回転焼きが1つ届いた。姉達には「しょうがないなあ」と思われながら、でも、アツアツの回転焼きを手にして、すごくおいしかったのを覚えている。