前回は、外国人には「話し言葉」の「普通体」(例:食べる?、食べない、いいね、そうだよ)を使うのは難しいので、最初は「丁寧体」(例:食べますか、食べません、いいですね、そうですよ)から勉強すると説明しました。
普通体が難しい理由の一つに、「いいね」「そうだよ」「困ったな」「そうか」などに見られる「ね」「よ」「な」「か」などの「終助詞」(文末に付けて、話し手の気持ちや意志を表す助詞)の存在があります。
日本人は、「終助詞」をやわらかく言ったり、強く言ったりして、自分の発話文(話す文)を調整しますが、滞在期間の短い外国人には、その微妙な調整ができません。
次の会話(1)を見てください。この会話には終助詞がありません。どんな感じがしますか?
会話(1)
A:値段はどっちが安い?
でも、このごろは西友も安くなってきた。
A:ダイエーのほうがいろんな商品がある。
B:そうだ。
会話がぶっきら棒で、ぶつぶつ切れているような気がしませんか? また、会話している人が女性か男性かの区別がつきません。「終助詞」を付けた会話(2)を見てください。
会話(2)
A:値段はどっちが安い?
A:ふーん。
B:でも、このごろは西友も安くなってきたね。
A:うん、ダイエーのほうがいろんな商品があるね。
B:そうだね。
「終助詞」が加わることで、会話が軟らかく自然になりましたね。
「終助詞」は文末について話し手の気持ちや判断を表す役割を持ちます。今回は、終助詞の中から、よく使われる「か」「ね」「よ」の基本的説明をします。「終助詞」は、もちろん丁寧体の会話でも使われますが、特に「普通体」の会話では欠かすことのできないものです。
1.「か」
「か」は丁寧体では「明日行きますか」「寒いですか」のように、文末について「質問」や「疑問」を表します。イントネーション(抑揚)は「か」の音が上がります。しかし、「普通体」では「明日行くか」「食べるか」「寒いか」のような言い方は非常にぞんざいで、時に失礼な言い方になります。このため、「普通体」の質問文・疑問文では「か」は付けないで、文末を上げて、「明日行く?」「食べる」「寒い?」「いくら?」のような言い方をします。
「か」には質問・疑問以外に、「誘い」(例: いっしょに出かけませんか。)、「うながし」(例:もうやめにしないか。)、「納得」(例:ああ、そうだったのか。<↓>)などのような使い方もあります。
2.「ね」
「ね」の基本的な意味合いは「共感」です。自分の共感を表したり、相手に共感を求めたりします。
(1)A:これ、おしいね。
B:うん、おいしいね。
(2)A:手伝ってね。
B:いつでも言ってね。
(3)A:遅いから、帰るね。
B:じゃ、明日朝9時半ね。
「感動の気持ち」を表すときは、「ね」が「ねぇ・ねえ」と長母音化(長く発音)することが多いです。
(4) A:これ、おしいねえ。
B:ホント、おいしいねえ。
3.「よ」
「よ」の基本的な意味用法は「聞き手(相手)に知らせたり、注意を喚起する」ことです。
(5)あぶないよ。
また、(6)「命令、禁止」や、(7)「誘いかけを強める」用法もあります。
(6)やめろよ。撃つなよ。
(7)いっしょに行こうよ。
では、宿題です。次の( )の「ね」か「よ」のどちらが適切か選んでください。選んだ理由も考えてください。
(1)A:芥川賞の受賞作品を読みましたか。
B:ええ、読みました(よ/ね)。
A:私も先週読みました。おもしろかったです(よ/ね)。
(2)A:この間の日曜日にジェットコースターに乗りました(よ/ね)。
B:そうですか。私はまだです。
A:すごくこわかったです(よ/ね)。