170)コロナワクチン3回目

 用事があってしばらくの間仕事場を離れていた。久しぶりに帰ってみると、いくつか重要な書類が届いていた。その中の一つが、第3回目コロナ接種のお知らせであった。

 ずっと気になっていたので、急いで封書を開けた。

 1枚目にあったのが、接種日時と接種場所を知らせる用紙である。

 

接種日時:2022年3月15日 午後3時30分

接種場所:〇〇スクエアビル第1会場(11階)

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 日付が目に飛び込んできた。

       

「3月15日! えーっ、今日ではないか。午後3時半・・・」

 

 そのとき私の腕時計は3時10分であった。

 

「えーっ、よりにもよって。私が戻って来るその日が接種日だなんて・・・」

 

 用紙の真ん中に「上記予約を変更・キャンセルした時は、下記の方法で予約を取り直してください。」とある。その方法は、①インターネットで予約される場合 ②お電話でご予約される場合・・・。

 私は焦った。すぐ電話しようか、インターネットにしようか、でも、インターネットは必ず間違うし、と思いながら。

 しばらくして、しかし、どうしても気になるので、「えい、電話をかけよう」と、記載されていた電話番号、0120-〇×〇×に電話をかけた。

若い男性が出た。

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「コロナワクチン予約受付佐藤です」

「あのう、今日が接種日だったんですけど、用事で行けなくて・・・」

「今からでも無理ですか?」

「はい、今からは無理なので、別の日にお願いしたいのですが」

「はい、では、お名前と生年月日を教えてください」

「〇〇△子、昭和〇年×月△日」

「用紙の真ん中あたりに「予約受付番号」というのがありますが、その番号を教えてください」

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 私は番号を見つけて数字を読み上げた。男性はそれを復唱して、1、2分会話が途切れた。

 そのあと、

その係員が「お母さん、接種日時は3月15日ですね?」と確認口調で言った。

 

私はその時、はっと気がついたのだ。

彼の確認口調に何かを感じさせるものがあったのか。

 

「あー」と、一瞬絶句した。「あ、今日は3月15日ではなく、2月15日だ・・・」

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 3月15日という数字は最初から見えていた。しかし、焦っていたのもあって、今日が2月15日で、接種日は3月15日だという、両者が1か月違っているということが意識されていなかった。

今日=2月15日、接種日=3月15日がごっちゃになり、今日=3月15日=接種日になっていたのだ。

 

「あ、すみません。私の間違いです!」

 

 私はバツが悪くて、本当に恥ずかしかった。

 

「あー、来月ですね。間違ってました。佐藤さん!」

 

 私は相手が「佐藤」と名乗ったのを覚えていたので、点数稼ぎというか、罪滅ぼしというか、相手の名前を言ってみた。そこには、「私はボケおばさんだけど、あなたが名乗った名前は覚えているわよ。それほどボケてはいないわよ」とでもいうような、取り繕いの気持ちがあった。

 

 やり取りの間中、係の人の明るい穏やかな口調は変わらなかった。

 

 夜、夫にその話をしたら、夫は「「お母さん」と言ったの?「おばあさん」と言わなかっただけ偉いよ、その人・・・」と言った。

 私は思った。

 

「そうだよね。相手は私の年齢は分かっているのに、「おばあさん」ではなく「お母さん」を使った。昔は、お姉さんとかお嬢さんとか言われたこともあったが、いつの間にか「お母さん」と呼ばれるようになった。そして、今や・・・」

 

 来月の3月15日は間違いのないように、時間前には会場に着いているようにしよう。そして粗相なく、きちんとワクチンを受けてこようと心に誓った。

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