次のイラストを見てください。女性が何をしているか分かりますか?
これは昔の女の人が、庭でお米を研いでいる姿です。「研(と)いでいる」というのは、「洗っている」という意味です。庭にはホタルが何匹かいます。
そこで一句。
「米洗う 前( )蛍が 二つ三つ」
これは昔(年代不詳)読まれた作者不詳の俳句ですが、「前」の後ろ(( )の中)に「を・に・で」のどれかを入れて、俳句を仕上げてください。
できましたか? そうですね、次のようになりますね。
「を」を入れる→ ①米洗う 前を蛍が 二つ三つ
「に」を入れる→ ②米洗う 前に蛍が 二つ三つ
「で」を入れる→ ③米洗う 前で蛍が 二つ三つ
では、①~③の俳句を読んで、「蛍」がどんな動きをしているか想像してください。
次のabcの中から、ご自分の感じに近いものを選んでください。
a.「蛍」が素早く、さっと通り過ぎていく感じがする。
b.「蛍」に動きはなく、じっとしている感じがする。
c.「蛍」が上下に、また、左右に飛び回っている感じがする。
いかがでしょうか? 答えは次のようです。
①-a ②-b ③-c
①~③の俳句は、「前」のうしろの「を・に・で」が違うだけです。でも、感じが違いますね。
今まで見てきたように、いろいろな語などに付いて、文中でいろいろな役割や意味を果たすもの(要素)を「助詞」と呼びます。
助詞は働きに応じて、いくつかの種類に分けられます。
- 格助詞:名詞の後ろに付いて、名詞と述語(主に動詞)との規則的な関係を示す。(が・を・に・へ・で・と・から・まで・より(・の))
例:明日8時に友達と学校へ行く。
- 取り立て助詞:名詞だけでなく、文中のいろいろな語に付いて、話し手の気持ちを表す。(は・も・だけ・しか・さえ・こそ・ほど・くらい(ぐらい)・なんて・なんか等)例:私は毎日1時間だけゲームをする。弟もそうだ。
-
- 終助詞:文や句のうしろに付いて、話し手の疑問や喜怒哀楽の気持ちを表す。
(ね・ねえ・よ・な・かな・さ・ぞ等)
例:危ないよ。
おもしろいね。
- 接続助詞:文と文、句と句などをつなぐ助詞。
- 例:熱があるから、早く寝よう。
- 良い天気だが、少し寒い。
格助詞は「を、に、で」以外に「へ、から、まで、までに」などがあります。
格助詞は文の構造を作る助詞なので、日本人ネイティブは「名詞+格助詞」だけで、
後ろに来る動詞や述語を連想したり、想像したりできます。
最初に出てきた俳句は、次のような動詞(述語( )の中)が想像できました。
①米洗う 前を蛍が 二つ三つ →(通り過ぎていく)
②米洗う 前に蛍が 二つ三つ →(止まっている)
③米洗う 前で蛍が 二つ三つ →(飛び回っている)
つまり日本人は文を最後まで聞かなくても、格助詞によって、相手が何かを言いたいか分かるし、相手もあなたの言いたいことが、もちろん100%ではありませんが、分かるということになります。
「助詞」は働きが「複雑で難しい」ので、「助詞」は「女子」に似ているなどと言われることがあります。
次回は格助詞について考えたいと思います。