239)★日本語文法ものがたり22★「人の呼称」1

 

             

 猛暑が続いて大変ですが、「日本語の文法」を覗いてくださって有難うございます。今日もよろしくお願いします。

 

 まず、前回の宿題の説明をします。宿題のポイントは、「~てから」と「~たあとで」の使い方の違いについてでした。

 

1)子供:遊びに行ってもいい?

    母親:宿題してからね。

  子供:うん、分かった。

       

 

1)の会話で母親は、遊びに行きたがる子供に「宿題してから」と言いました。これは、「遊びに行ってもいいが、それは宿題をすることが絶対条件である」と言おうとしたのです。つまり、母親は、宿題をすることが必須で、「それが終わったら」遊びもOKだと言っています。

 「このように、「~てから」は「まず「~」することが重要で、その条件が満たされたら」という意味合いが入っています。

 一方、「~たあとで」はそのような意味合いは含まれず、時間(時点)についてのみに重点が置かれ、「それが終了した時点で」という意味になります。

 

2)部下:部長、ちょっとお話があるんですが。

    部長:あ、今から会議なんだよ。会議が終わったあとで、部屋に来てくれる

     かい?

    部下:はい、分かりました。

 

 部長は「会議が終わる」ことが必須だと言ったのではなく、「会議が終わった時点で」と「時点」を示唆したのです。

          

           

 

 では、今回のトピックに入りましょう。今回は、文法を少し離れて、「人の呼称」を取り上げます。

「人の呼称」とは、自分自身を含めての「人の呼び方」です。

 

 例えば英語では、自分のことは “I”,  相手のことは“you”,  第三者のことは “he, she” と言いますが、日本語ではそう簡単には行きません。

 日本語では、自分のことを含めて、人の呼び方は数が多く、やや複雑になります。

「人の呼び方(呼称)」

 まず、自分自身のことをどう呼ぶか、考えてみてください。

「わたし」「わたくし」「あたし」「うち」「うちら」、「ぼく」「おれ」「おいら」「わし」・・・?

 「わし」は近頃ではあまり聞かなくなりました。しかし、漁師さんとか相撲力士さんなどでは使っているのを聞くことがありますね。

     

 私は大阪出身ですが、小学生、中学生のころは「うちら」と言っていました。「うちら」は複数の人を指す場合もありますが、自分一人のことでも「うちら、そんなこと知らん。」などと言っていたように記憶しています。

 

 では、次に、皆さんは、会話している時、相手のことをどう呼びますか。

「〇〇さん」「××君」「あなた」「あんた」「きみ」「おまえ」「おめー」「てめー」、「そちら」「そちらさん・そちらさま」「お宅」「お宅さん・お宅さま」・・・?

 

 「徹子の部屋」でおなじみの黒柳徹子さんは、対談相手には、年上でも年下でも「あなた」を使うことが多いです。「あなた」は昔は丁寧な言い方であったようですが、今では年上には失礼な感じがします。「おめー」「てめー」になると、男性が喧嘩をする時に聞かれる言い方ですね。  

         

         

 

 あなたは、会話する時、相手をどう呼ぶかで戸惑うことがありませんか?

名前を知っている時は「〇〇さん」と呼ぶことが多いようですが、名前がうろ覚えだったり、知らなかったりすると、「呼称」を省いてしまうことが多いです。例えば、「山田さんはその時どうしたんですか。」という代わりに、「その時どうしたんですか。」と直接話しかけるのです。

 日本人は、「あなたは」とか「〇〇さんは」とか、相手を決めつけるような言い方は極力避けたい傾向があるようです。

 

 では、第三者のことはどう呼ぶか?

「あの人」「あの方」「あの子」「あいつ」「彼」「彼女」・・・?

 

英語のhe, sheは「彼」「彼女」と訳されることが多いですが、日本語の場合は、「彼」「彼女」は「私の彼はねー」のように、恋人の意味合いを持つことが多いので、注意が必要です。

 

 このように見てくると、「人の呼称」にはいくつかの要素が絡んでくるのが分かります。

話し手自身が男か女か(性別)。 年齢はどうか、若いか年寄りか(年齢)。

相手とどういう関係か。友達か家族か。仕事上の上司か部下か。先輩か後輩か(ウチかソトか)(親疎関係)。

今どこで会話しているか(場面)。

何について話しているか(話題の内容)、などなど。

 

 これらの他にも話し手と相手の出身地・地域性(方言)も、自分や相手をどう呼ぶかに関係してきます。

ウチかソトは簡単に言えば、自分が、または相手が家族のメンバーかどうかということです。

 また、「親疎関係」というのは、相手とどの程度親しいかということです。会社の上司でも、最初は丁寧な言い方で接していても、だんだん親しくなって、仮に友人のような間柄になってきた場合には、「呼び方」も話し方も変化し始めると考えられます。

「場面」というのは、2人だけで雑談するのと、フォーマルな会議の席で話すのと話し方も変化があるだろうし、相手への「呼称」も変わると考えられます。

同じことが「話題の内容」についても言え、仲のよい者同士が何の目的もなく雑談する場合と、きちんと説明したり、謝罪したり、感謝したりする場合などで、話し方も相手への呼称も変わってくるはずです。

 

ここで今週の宿題をお願いします。

 

1.あなたは結婚しています。友人と会話していて、夫のことが話題になりました。あなたは、自分の夫のことを友人にどう言いますか。「呼称」を考えてください。(一つを選んでください。その他( )にはあなたが使う「呼称」を入れてください。)

         

 A:ご主人、お元気?

 B:ええ、(夫・主人・旦那・旦那さん・つれあい・パートナー・夫の名前・

   その他(  ))は健康オタクで、いつも体を鍛えてるわ。

 A:それは結構だわ。

 

2.あなたのご主人とご主人の友人が会話しています。あなたのことが話題になりました。あなたのご主人はあなたのことを友人にどう言いますか。「呼称」を考えてください。

         

 

 A:奥さん、お元気?

 B:ああ、(女房・妻・家内・嫁さん・嫁・つれあい・パートナー・妻の

   名前・その他(  ))は毎週ヨガ教室に通ってるよ。

 A:それは結構なことだね。

        

 次回は宿題を中心に、「人の呼称」についてもう少し続けたいと思います。