193)コンビニATM

 お金が入用になって、コンビニのセブンATMに行った。取引銀行は東京都内にしかなく、その他の地域ではコンビニで入金や引き出しができる。料金はかからない。土日も稼働しているのでよく利用している

 その日は少々出費があって、30万円引き出す予定があった。

 ATMには引き出し限度額があって、1回に20万円、1日2回まで引き出せる。

 最初に限度額20万円を引き出した。次に残りの10万円を引き出す。戻されたカードと支払い明細票は、肩から掛けているポシェットに入れた記憶がある。そして、そのままカウンター受付に行き、別件の通販の支払いを終えた。

          

 これが午後4時5分。

 

 午後7時夕食時に、ポシェットに20万円しかないのに気がついた。自分が引き出したのは、2回合計で30万なのに、何度数えても20万しかない。支払い明細票ははちゃんと2枚ある。

 10万円はどこに入れたのか記憶がない。自分自身がATM現金受け取り口からお金を取った記憶がない。サー大変!

 

 証拠となるはずの支払い明細票と、キャッシュカードを持って、セブンイレブンへ舞い戻る。

 あたりはすでに暗くなっている。午後7時を過ぎたころか。コンビニは家から歩いて7,8分のところにある。

 

 コンビニへ行く途中、思いを巡らす。

 私が現金を取り忘れていたとして、それに気がついた人がお金を持って行ってしまうのは、仕方のないことだなあと思ったりする。現金だもの。いくら日本人が正直だといっても、お金が目の前にあったら、誰でも持って行くよ。 ひょっとしたら、自分自身だってそうするかもしれない・・・。 だから、残念だけど、なくても仕方がないかなあという気持ちがどこかにあった。

             

 コンビニに着いてまずATM機へ向かう。入口を右に入って一番奥のトイレの手前にある。現金が出てくる「現金払い出し口」をまず見る。「ふた」がきちんとかぶさっている。

 私はてっきり、現金口には「ふた」がないと思っていた。他の銀行などでは「ふた」がなく、開きっ放しになっているところが多い。しかし、セブン銀行ATMはふたがしっかり付いていた。それは外から手で開けられない。

 若い店員男女2人が親切に対応してくれた。そこで分かったのは、取り忘れの場合、一旦払われたお金は支払い機に戻るはずだということであった。  

          

 土曜日の夜だったので、戻っているかどうか確かめる方法がわからず、オタオタしていたら、1人の店員が防犯カメラを見てくれると言う。

 彼はそのために従業員しか入れないバックヤードに入っていった。

 

 私は待っている間、少し冷静になってきた。

そして、「そうだ、自分はキャッシュカードを持って来ているのだから、ATMで残高確認をすればいいのだ」と気がついた。画面に残高確認が出ない場合は、試しにお金を少し引き出して、残高を見ればよいのだということにも気がついた。

 

 防犯カメラをチェックしに行ってくれた店員が戻ってきた。カメラにはその時間帯、誰も写っていなかったし、怪しい動きはなかったとのことだった。

 私は店員に、キャッシュカードを持っているから、自分で残高を調べてみると言った。店員はそれがいいとうなずいて、持ち場に戻っていった。

            

 祈るような気持でカードを差し込み、暗証番号を押した。画面に「残高照会」のマークが出た。マークを押して、支払明細書発行の「必要」ボタンを押す。しばらくして、カードと明細票が出てきた。

 

「おっ、金額が同じだぞ」

 

 さっき20万円引き出した時の残高と数字が似ているような気がした。

さっきの明細票と照らし合わす。同じ額だ。

 よし、今度は10万円引き出してみよう。

やはり、さっき10万円引き出したときと同じ額の明細票が出た。

 

 これで残金は減っていなかったし、一旦払われた10万円は元に記帳されていたことが明らかになった。

 

 半分諦めていたので、とてもうれしく感じた。良かった、助かった。

 

 そうか、コンビニのATMだけあって、お金はすぐに戻るようになっているのだ。

人の出入りが激しい場所だから、次の人がすぐにATMの前に立つこともある。開けっ放しの支払い口に取り忘れた現金があったら、起こさなくていいトラブルを起こす可能性がある。

 銀行のその配慮に感心し、感謝した。