112)庭の垣根のカイズカイブキ

 

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 隣の家の奥さんが一週間ほどかけて、垣根のカイヅカイブキを短く剪定した。

我らが住宅団地も出来上がってから38年になる。38年間の間各家のカイヅカイブキはどんどん伸びて、鬱蒼とした生け垣になっている。カイヅカイブキは枝先が火炎状になり、側枝が旋回して渦巻き状の円錐樹形になる特徴がある。       

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 近所では植木屋さんに入ってもらっている家があるようだが、どの家も植物の勢いにはかなわず、振り回されているというのが現状だ。

 カイヅカイブキ貝塚伊吹)は昭和時代を代表する生け垣樹種で、当時は大気汚染に耐える針葉樹として盛んに植えられたらしい。枝葉が密生するため植生直後から家の目隠しになる、放っておいても樹形が自然に整うとなどの長所があったが、現状では大きくなりすぎ、いろいろな家で伐採の憂き目に遭っている。

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 我が家は小学校の裏門(駐車場門)の真ん前にあるので、カイヅカイブキが目隠しになって、大いに助かってきた。しかし、2,3年前ごろ、自治会から「小学校の裏門通りの歩道が通りにくい。各家のカイヅカイブキがせり出してきて、歩道が狭くなっている」という苦情が出た。

 最初はこじんまりしていた植栽が年月とともに成長し、道路側へ50センチから、家によっては70センチぐらい突き出ている。雨の日など傘をさしていると、傘が木にぶつかって歩けない。たいていの人は歩道から車道に出て歩いている。

 どちらの家も自治会の苦情が気になって、その家その家で毎年植栽の厚みを電動のこぎりや手動のこぎりで削ってはいるが、どんどん歩道が狭くなっていく。

 

 隣の奥さんが一週間かかって、カイズカイブキの出っ張りを3分の1ぐらいに削り取った。根気良く、手動のこぎりでごしごしと切っていかれた。

 奥さんの努力で、お隣の生け垣の植栽の幅は薄くなり、風通しがよくなり、奥さんの技術もあって見た目にもすっきりとなった。私が何より驚いたのは、翌朝お隣さんの前を通ったとき、歩道があまりに広くなっていたので、「えーっ、道幅がこんなに広くなっている!!」と大声を出したくらいだ。

 住宅団地の中でも、我らが小学校前が、一番しっかりとカイヅカイブキで生け垣を覆われている。団地の中に入ると、ツゲやヒバやアカメなどの低木の生け垣にしたり、木と木の間隔を広くして風通しよく、また、庭の中が見えるようになっているところも多い。最近では垣根など全く作らず、外から庭は丸見え、家も丸見えというスタイルも多い。オーストラリアに行ったとき、ほとんどの家がそうだったので、きっと日本にも洋式スタイルが取り入れられてきたのであろう。

 お隣さんのすっきりした生け垣を見て、同じ並びの家は、きっと、自分達もお隣さんのようにしなければならないとプレッシャーを受けているにちがいない。 

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 自治会は「歩道が歩きにくい」と暗にほのめかすだけで、「カイヅカイブキを何とかしてください」という正式の要請までは出していない。たぶんこれからも要請としては出さないであろう。

 こういう場合はきっと住民の自主的な行動にかかっているのであり、自治会や市もそれを待っているのであろう。

 しかし、だからといって住民も簡単には行動に移せない場合が多い。そうやって、問題は先送りされていく。