4)相田みつを氏の「道」について

相田みつを氏との出会いは、息子が会社の年納めの会でもらってきたカレンダーである。

たて30センチ横15センチほどの小さなものであった。カレンダーには月ごとに相田みつを氏の名言・格言が一つずつ載っていた。その中で、私が一番惹かれたのは「道」という詩であった。

 

          道は自分でつくる

        道は自分でひらく

           人のつくったものは

   じぶんの道には

   ならない

 

 作家H氏は、「自分は長い人生の間に、自分から人に頼んで仕事をもらうというようなことはなかった。なぜかしら誰かが仕事を持って来てくれる、声をかけてくれる。」というようなことを書いていた。

 そういう人がいるとしたら、その人は幸せな人だ。私には数冊の著書があるが、いつも自分で書くべき題材を見つけ、構想を練って、出版社に持ちかけてきた。編集の人に話を聞いてもらい、企画書を出してきた。H氏のように誰かが声をかけてくれることはなかった。

 相田みちを氏の「道」を読んだとき、私は共感し、意を強くした。

そして、ふっと、これだけきっぱりと「人を頼るな、自分で道を切り開け。」という人なのだから、彼はひょっとしたら障害者じゃないのかと思った。障害者の人は、基本的には自分で自分の障害を乗り越えなくてならない。社会や人が助けてくれることはあっても、人の助けは当てにならぬことを人一倍身に染みて知っているからだ。

相田氏は障害者ではなかった。しかし、精神的にはノイローゼになるくらい悩み、苦しんだ人である。人に頼らず、自分で道を拓くことの重要さを知っている人なのだ。