「通販会社ジャパネットたかた」は長崎県佐世保市に本社を置く。その創業者高田明さん。
人より1オクターブは髙い声で自社の商品宣伝をする姿は、私の脳裏にも焼き付いている。
高田さんは、どうすれば商品の価値を正確に伝えることができるかを追求し、また、地方からの情報発信にこだわり、プロサッカーチームの運営など、チームが活気づくために何が必要なのかを追求してきた。
以下は、「ジャパネットたかた」創業者の高田明さんのお話です。(NHKラジオ深夜便「明日へのことば」で放送。)
「私は兄弟の2番目で、兄達も皆、写真の道を行っていて、毎日ホテルの宴会場で写真を撮っていました。
16年間、夜は写真を撮っていて、41歳まで撮っていました。40ですよ。40歳で「こっち向いてください!」「はい、こっち向いてください!」って撮るわけですよ。
その時に一番僕が学んだことは、1枚500円の写真なんですが、それを買ってもらわなきゃいけない。買ってもらえる写真を撮らなきゃいけない。ビジネスって、売れなきゃ意味がない。
じゃ、どうしたら売れるかということですね。
お客様の最高の笑顔と、最高と思える表情の写真を撮ってあげられるかどうかなんですよ。ただこれだけなんです。
これを16年間、「こっち向いてください。」と言って、ポンポンポンポン写真を撮っていく。速く撮れるんです。お客さんが下向いたり、上向いたり、横向いたりしたら買ってもらえない。だから僕は、いつも声をかけて、「こっち向いてください。」「こっち向いてください。」って。
特に女性の方は、(写真を見て)「私じゃない。」と言うんですよ。
「奥様の顔です。」
「私はこんな顔していない。」
って余りにもおっしゃるから、横の方に言うと、「これ、あなたよ。」「私じゃない。」・・・。
そういうことを重ねる中で、1枚の写真、僕は支払い価値って言うんですが、「支払ってもらった価値を返す」ということを学ばせてもらったことが、やっぱり、ずっと、通販の世界に入っていた時も、常にお客さんのために、常に喜んでいただくためにビジネスはやっていかなければいけないと、こんなことを学んだということですよね。」
「いや、マーケティングは滅茶苦茶勉強になりましたね。
一番厳しいのは関西です。関西っていうのは、大阪だけではない、兵庫とか四国も全部そうです。中国地方では岡山までは関西です。関西の方にお叱り受けるかもわからないけど、なかなか買ってくれない。
「兄ちゃん兄ちゃん、寝てないんだろう? あんまり売れてないようだけど、眠いだろう? 大変だね。大変だね。何枚売れたの?」と言ってくれるのだけど、関西の方は残ったのを買われるということはない。
そういうマーケティングには地域性があって、鹿児島の方はよく買っていただける。職業も厳しいのは公務員さん。」
「たかた」は、1994年からテレビショッピングで通信販売を行うようになった。
「これだけの反響をいただくんだったら、テレビでやってみようかなと思ったんです。見えないものが見えるようになったというのも一つの要素ですが、僕自身は、見えないラジオであっても、見えるテレビであっても、インターネットであっても、どれでも伝え手の思いが人の心に響くし、何のために商品を伝えているんだろうという根本的なところが、聞いていらっしゃる、見ていらっしゃる方に伝えられるかってことが、一番大事かなって考えてますね。」
「伝える上では、伝え方というのがありますね。それは僕みたいに高い声は、「作った声ですか?」と言われることがあるが、伝えたいことがあったら、声が高くなるんです。若い男女で好きな人ができた。やっぱり自分の心を伝えたい時は表情にも出てくる。それといっしょですよ。
それと、一方的にしゃべらないのは、間(ま)が要ります。しゃべったあとの間(ま)、3秒の間でも、5分しゃべって3秒の間でも、相手はその3秒の間に頭の中で復唱しているんです。この間がなくて「安いです、安いです」と言っても、絶対買ってもらえない。
「これ、9800円ですよ。お安いですよ。いい商品ですよ。」と言って、5秒置くんです。すると、その瞬間に、5分間のことを全部復唱して、「そうだな。じゃ、買ってみようか。」と。間は次の「有」を生み出す「無」であると思っています。」
高田明さんのお話はまだまだ続く。彼の話を聞いていると、聞き手を引き付ける力も、聞き手に買いたい気持ちにさせる力も、一朝一夕でできるものではなく、長い時間と経験によって培われていくものだということがよく分かる。