246)女性数学者 井垣伸子さん

 井垣伸子さん。女性数学者である。関西学院大学総合政策学部教授。Generalibityセンター初代所長。         

         

子供のときから、算数や数学が好きで、トップクラスであった。文章題が大好きで、親が分からないのを解いて驚かせていた。毎日数学ばかりやりたいと思っていた。母親は常日頃から「やりたいことをやりなさい。働きなさい。」と言っていたし、常にサポートしてくれる両親であった。

       

 井垣さんがGeneralibity(じぇねらりびてぃ:生産力のある、生成的な)という言葉に出会って、定年までの間は、(数学ではなく、)それが彼女のど真ん中の言葉になった。

(Generalibity:次世代育成能力の意味。アメリカの発達心理学者Erik Erikson(1902-1994)がgenerate(ジェネレイト:生み出す)という動詞から作り出した名詞。)

 

 Generalibityの意識が日本人の中にどの程度入っているのか、1000人規模の意識調査をした。 分析をしたら、面白いことに、見事に、若い頃は自分のことばかりが心配だけれど、ある時点で次の世代のことを考え出すという意識が、そこで交差する。 50~60歳になったあるポイントで、はっきりこんなに出るものかと感動した。

男性も女性も、自分のことから次世代のことに目が移るというポイントがクリアに出た。

 このポイントのことを「目覚めポイント」と名付けた。社会に目が向くポイントで、こういうものを人間はやっぱり持っている。

 

 男性の場合、定年の時、60歳から10年位の時期が脱自己本位ポイントである。自分だけでなく自分の他の世代も育てようという関心が育つ。そして、自分も育とうという、自分が充実しようという10年間でもある。

パッとしぼんでしまう10年でもあるが、彼らに居場所さえ見つけてあげれば、ものすごい力を社会に対して発揮するんじゃないかなと思う。

     

  

 

    


 女性の場合は、年齢を問わずずっと成長する。年齢とともにずっと増える。しかし、女性の場合はCreativity(創造性)というところが弱い。どうしても、女性は人のお手伝いをするとか、人のために何か活動するとかが多い。歴史的にあったせいかもしれないが、自分自身のCreativity(創造性)をいくつになっても出しづらいということが多い。

     

 

   

 

 Generalibityは、周りのことだけではなくて、深く自分の自己実現に関わっている。

これは大切なポイントで、社会のために何かをしたい、しかし、お手伝いすることばかりじゃなくて、またそのことが外にばかり向いているんじゃなくて、自分の中に向いた時にこそ、その人の力が発揮できるということである。

 自分がどうしてこの世に生まれてきたか、自分は何者かというところまで深く追求して、その結果、自分はこういう人間で、自分はこれじゃないとできないとか、それを使った社会貢献しかできないとか、そこで外とつながるというのがGeneralibityである。

 

 それから、生きる上で大切なことは、「気がすむ」ということ。「気が済むまでやろう」とう気持ち。

 周りを見ると気が済んでいない人が多い。皆がそれぞれ気が済むような、日々の生活の中で、生きている充実感を持ってほしい。

 今、経済効率性が目的になっている。一つのことだけを追い回すような風潮ではなく、キャンプへ行って焚火を眺めるとか、一人一人が「気が済むまで」やりたいこと、やれることをやってほしい。

 

  

 

 井垣さんは趣味が豊富で、リストを書けと言われればA4用紙でも足りないくらいだと言う。音楽は、ピアノ、ギター、ドラム。聞くというよりは自分でやりたくなる。スポーツは中学時代から卓球部。大学入る時も、日本一卓球の強い某企業がスカウトに来たくらい。テニスもスキーもやる。

最近はキャンプ。コロナの時は家の中にテントを張って、寝袋で寝たりした。独り遊び。オートバイの中型免許もある。

写真撮影も好きである。

 井垣さんはキャンパスの外に出て、総合政策の先生のようにボランティア活動がしたかった。総合政策学部の教授として置き土産をしたかったと言う。