232)★日本語文法ものがたり20★動詞辞書形

皆さん、こんにちは!

 

             

 今日はの辞書形の使い方について勉強します。

 動詞の辞書形というのは、例えば、「食べてください」なら、「食べて」の「基本形」のことです。国語辞書や英和辞書には、動詞は基本形が載っています。「食べて」なら「食べる」、「行こう」なら「行く」、「しろ」なら「する」の形です。辞書に載っているので、「辞書形」と呼ぶことが多いです。

 

 辞書形は他の語と結び付いて、次のような役割を果たします。

 

1.~ことができる

 例:私はピアノを弾くことができます/できる。

         

 

2.~前に

 例:毎晩寝る前にストレッチ体操をします/する。

        

3.比較

 例:出かけるより家にいる/いたほうがいい。

         

 では、1~3を見ていきましょう。

 

1.「動詞の辞書形+ことができる」は「可能」を表します。「可能」とは、「能力」を問題にする場合と、「環境・状況」として可能かどうかを表す場合があります。次の例を見てください。

 

(1)能力

・彼はスペイン語を話すことができる。(→話す能力がある。)

       

 

・彼女は着物の着付けをすることができる。(→着付けをする能力がある。)

 

         

 

(2)環境・状況

・この水は飲むことができません。

  (→汚くて、また、何かの事情で飲むことが不可能。)

         

 

・この道は工事中で通ることができない。

  (→工事中という状況のため、通ることが不可能。)

         

 

 次は授業での私の経験談です。

 授業で「可能」を表す「~ことができる」を教えている時、1人の外国人留学生が手を上げました。そして、「先生、お手洗いに行くことができますか?」と聞いてきました。

 彼は「お手洗いに行ってもいいですか?」と許可を求めたのですが、そして、私にも彼の言いたいことは分かったのですが、ちょっと違和感を感じました。

         

 彼はメキシコの学生で、母国語のスペイン語では「可能」を表す言い方と、「許可」を表す言い方が同じようなのです。それで、「~ことができる」を使ったのですが、やっぱり日本語では、「先生、お手洗いへ行ってもいいですか?」のような許可を求める言い方のほうが適切に思われますね。

 

2.「動詞の辞書形+前に」は、非過去(過去ではない形)の事柄の場合は問題ないのですが、その事柄が過去の場合は、外国人学習者は時々混乱を起こします。次の文では、初めの文が非過去、あとの文が過去の場合になります。

 

 ・毎朝ご飯を食べる前に、薬を飲む。

 ・今朝ご飯を食べる前に、薬を飲んだ。

         

 学習者は過去の場合、「薬を飲んだ」と過去の事柄なのだから、「ご飯を食べる」のも過去の事柄だから、「ご飯を食べた前に」とすべきだと思うようです。

 彼らの考えは「なるほど」と思わせますね。しかし、これは「形」の問題で、ともかく「動詞+前に」を使う場合は、動詞は辞書形になるのだと教えます。

理屈、つまり、文法的には、「前に」は、ある事柄がまだ成立していない時点にあるので、成立した時に使う「~た(食べた)」(過去形)ではなく、「辞書形(食べる)」(非過去)を使うと説明できます。

 

3.「動詞辞書形+より」で比較を表します。

・進学するより就職したほうがいい。

         

 

・結婚するより仕事を続けたいと思う女性が増えている。

 

         

 

 ・このまま生きているより死んだほうがましだ。

          

 

 最後の文の「生きている」は、以前勉強した「~て+いる」の形ですが、「いる」は辞書形になっています。

 

 では、今週の宿題です。

 

1.「書くことができる」「読むことができる」のように「~ことができる」は可能を表します。日本語には可能を表す表現がもう一つあります。「私は漢字が書ける」「彼はアラビア語が読める」の「書ける」「読める」のような形です。

 次のabはどう違うか、考えてください。丁寧さの程度、話し言葉的か否か、話し手の主観(気持ち)の度合いなどから、考えてみてください。

(1) 

a.お腹がいっぱいで、もう食べられない!

b.お腹がいっぱいで、もう食べることができません。

         

 

(2)

a.恐れ入りますが、この先は入れません。

b.恐れ入りますが、この先は入ることができません。