191)★ #日本語文法 ものがたり10★助詞(格助詞)⑤

                                                       

 前回の宿題は、次のabのうち、b「~から卒業した」がおかしいのはなぜかでした。

 

   a.娘は先月大学卒業した。

?b.娘は先月大学から卒業した。

 

 「~から卒業する」が間違いなのではなく、例えば、「前田敦子がAKBから卒業した」「反町隆史が「相棒」から卒業」というような言い方はときどき聞きますね。

                  

「卒業する」にはどんな意味があるのか、国語辞書を覗いてみましょう。

大辞林三省堂)の「卒業(する)」には次の4つが載っています。

 

1.学校の全教科、または学科の課程を修了すること。(「今春卒業する」「卒業式」)

2.ある状態・段階を通過すること。(「もうマンガ本は卒業した」)

3.一つの事業を完了すること。

4.所属するグループやレギュラー番組を辞めること。

 

1は「学校を修了する」意味の「卒業する」ですね。2~4は「学校を修了する」の意味ではなく、一つの状態や段階、グループなどを「やめる、出る、終わる」の意味を表します。

そして、1の意味では「~を卒業する」のみを、2~4では「~を卒業する」も「~から卒業する」も使うことができるのです。

 

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 では、今日の内容に入ります。

今まで助詞の中でも、文の構造に関わる「格助詞」について勉強してきました。

 

(1)a.来週、海行きます。

 b.来週海行きます。

 

(2)a.去年、仲間とアフリカ大陸行った。

 b.去年、仲間とアフリカ大陸行った。

 

(1)(2)に出てくる「へ/に」は、「行く」「来る」「帰る」のような「移動の動詞」とくっ付いて、「方向や到着点」を表します。両者は「へ」が方向を、「に」が到着点を重視するという違いはありますが、どちらを使っても、意味はほぼ変わりません。

 

(3)いい天気だから、公園散歩しましょう。

(4)あの角曲がってください。

 

格助詞「を」は、「肉を食べる」のように目的語を表すほかに、「通過の場所や経過点」も表します。

 

 

 

 当ブログの169)★日本語文法ものがたり5「助詞」①★で、「米洗う 前を蛍が 二つ三つ」という俳句を紹介しました。

そこで出てきた「前を」の「を」が「通過の場所や経過点」を表す「を」ですね。「を」を使うと、曲がったり、通り過ぎたりする様子が目に見えてきますね。

 

 では、今日の問題です。

次の文では、「に」「へ」「を」、そして動作の場所を表す「で」が使われています。aとbに合うイラスト番号を( )の中に入れてください。

 

(イラスト・写真がピッタリしない場合は、「そんな感じがする」という漠然としたとらえ方で選んでください。)

 

(5)a.アフリカ大陸行く。(  )

  b.アフリカ大陸行く。(  )

    A            B

       

(6) a.富士山登るのは大変だよ。(  )

  b.富士山登るのは大変だよ。 

 A    B

            

(7)a.来年はドーバー海峡泳ぎたい。(  )

 b.来年はドーバー海峡泳ぎたい。(  )

 A   B                                                                                         

答: (5)a-A b-B  (6) a-B b-A (7) a-A b-B

 

(5)a「アフリカ大陸へ行く」とb「アフリカ大陸を行く」では、「へ」が方向を表しているのでA、「を」が通過点を表すのでBになります。aは単にアフリカに向かう、到着することを表し、bはそのアフリカをあちらこちら横断・縦断することを表します。

(6)a「富士山に登る」は「に」が到着点を表すので、頂上に着いているイラストBと合致するでしょう。一方、b「富士山を登る」は、登山中の過程を表し、一歩一歩登っていく様子Aを示しています。

(7) a「ドーバー海峡で泳ぐ」は単に海峡のどこかで泳ぐだけなのでA、一方、b「ドーバー海峡を泳ぐ」は海峡をイギリスからフランスまで泳ぎ切ることを表すのでBになります。

 

次は宿題です。(8)abの違いを、分かりやすく説明してください。

 

(8)a.我々は令和の時代生きている。

b.我々は令和の時代生きている。