219)★#日本語文法ものがたり17★#複文の中の「~た」

             

 前回の216)「★日本語文法ものがたり16★「~た」のいろいろ」の宿題の答えは、次のようです。

宿題1b:「~たほうがいい」のほうが「~るほうがいい」より、話し手の気持ちがこもっている。

宿題2 :aは単に「今日図書館が休みかどうか」を聞いているだけだが、bは、今日図書館が休みだろうということは知っていて、確認のために尋ねている。

 

 では、今日の勉強を始めましょう。

 今日は、「#複文の中の「~た」」です。

 文には単文と複文があります。#単文は「私はフランスへ行く。」「私はスカーフを買う。」のように、1文の中に#述語(動詞、形容詞、「名詞」+だ)が1つある文を言います。

一方、複文というのは、「私はフランスへ行くとき、スカーフを買う。」のように、1文の中に述語(ここでは、「行く」「買う」)が2つ以上ある文のことを言います。

今日は複文の中での過去「~た」についてです。

 

次の文では、Bさんはいつスカーフを買うでしょうか? 

フランスへ行く前でしょうか、行ってからでしょうか?

 

(1)A:スカーフ、どうする?

   B:フランスへ行ったとき、スカーフを買うわ。

  

     

 Bは「行ったとき」と言っていますね。ですから、スカーフを買うのは「フランスへ行ってから」になりますね。

 これは、日本人には簡単ですが、外国人、特に、英語圏の人には難しいようです。

彼らが言うのは、「スカーフを買う」のはまだ未来のことなのに、なぜ「行った」と過去を使うのかが分からないということです。

 

 では、次のBaとBbではどうでしょうか。Bさんがスカーフを買ったのはいつでしょうか? 

 

(2)A:スカーフ、どうしたの?

   B:a.フランスへ行くとき、スカーフを買ったの。

     b.フランスへ行ったとき、スカーフを買ったの。

        

 答えは次のようです。

 Baでは「フランスへ行くとき」、つまり「フランスへ行く前に」スカーフを買ったし、Bbでは「フランスへ行ったとき」、つまり「フランスへ行ってから」スカーフを買ったと考えられます。

 

        

 

 日本人は、「行くとき」「行ったとき」と聞くと、そこだけを問題にして、「行く」ということが完了しているかどうかで、「行く前」か「行ってから」かを判断します。

 「行くとき」はまだ「行くことが完了していない」から「行く前」であるし、「行ったとき」は「行くことが既に完了している」から「行ってから」と判断するのです。「スカーフを買った」という事柄が過去であろうが、非過去であろうか関係ありません。

 しかし、英語圏の人は、「スカーフを買った」という過去の文で、なぜ「フランスへ行くとき」と非過去の「行く」を使うのかが分かりません。

英語では「時制の一致」と言って、過去の事柄について述べるときは、すべて過去にしなければならないというルールがあるからです。

 

 似たような例としては次のようなものもあります。

 

(3)日本へ来る前に、日本語を勉強しました。

        

 

(4)毎朝ご飯を食べたあとで、コーヒーを飲みます。

 

          

(3)では、今はもう日本に来ている、つまり「日本に来た」ことは過去なのだから、なぜ「日本へ来た前に、日本語を勉強しました」とならないのか。また、(4)では、「コーヒーを飲む」のは毎日のことで過去のことではないのに、なぜ「ご飯を食べるあとで」ではなく、「食べたあとで」なのかが問題になります。

 日本語では「来る前に」「寝る前に」「仕事に行く前に」のように、「前に」の前では非過去「~る」を使うのです。一方、「本を読んだあとで」「仕事が終わったあとで」「掃除したあとで」のように、「あとで」の前では過去形「~た」が来るのです。

 

              

 

 これは「~とき」で説明したように、日本語では、過去のことであろうが、非過去の時であろうが、その事柄が「完了したか否か」で、「~たあとで」「~る前に」「~たとき」「~るとき」が決まるためです。