前回「形容詞「いい」」の答えは次のようです。
「普通体」
肯定・過去 いい
否定・非過去 よくない
肯定・過去 よかった
否定・過去 よくなかった
「丁寧体」
肯定・過去 いいです
否定・非過去 よくないです、よくありません
肯定・過去 よかったです
否定・過去 よくなかったです、よくありませんでした
今回は動詞の「時の表し方」について勉強します。
まず、次の詩を読んでください。某新聞に載っていた一般読者女性が投稿された詩です。
(1)「誕生日に」
深紅のバラ一輪
送ってくれていた
夫
去年まで
あなたはこの詩を読んで、どんなことを思いましたか?
作者のご主人は最近亡くなられたのですね。そして、そのご主人は去年の奥様の誕生日まで、ずっと毎年、深紅のバラを送り続けられていたのですね。
この詩の中から、どうしてご主人がバラを送り続けていたことが分かるのでしょうか? 「去年まで」とあるからでしょうか? では、期間を示す「去年まで」を省いてみましょう。
(2)誕生日に
深紅のバラ一輪
送ってくれていた
夫
「去年まで」があったほうが、送り続けてくれたのは去年までで、今は違う・・・(夫はいなくなった)ということがよく分かりますね。一方、「去年まで」がない(2)でも、「夫が送り続けていた」ことは分かります。
では次に、「送ってくれていた」を「送ってくれた」に変えます。
(3)「誕生日に」
深紅のバラ一輪
送ってくれた
夫
(3)の「送ってくれた」では、ご主人は一輪のバラを、誕生日に、何回か分からないけど、ともかく過去に(たぶんこの間の誕生日に)送ってくれた、ということが分かります。
次に、「送ってくれる」に変えてみます。
(4)「誕生日に」
深紅のバラ一輪
送ってくれる
夫
(4)の「送ってくれる」は過去ではなく、「現在も送っている」の意味になります。
3つの表現を合わせます。
(5)「誕生日に」
深紅のバラ一輪
送ってくれる(いつも送ってくれる)
{ 送ってくれた(過去に送ってくれた)
送ってくれていた
(過去のある期間、ずっと送ってくれた)
夫
このような、「(送ってくれ)る」「(送ってくれ)た」「(送ってくれ)ていた」などの表現によって、私達はその事柄が、いつ行われる/行われたかの、「時・とき」を知ることができます。「~る」は現在を、「~た」は「過去」を、「~ていた」は過去の一定期間続いた「継続」を表します。
「雪が降る」で、日本語の「時・とき」とともに並べると、次のようになります。
未来 明日降る
現在 毎日降る
現在の継続 今降っている
過去 きのう降った
過去の継続 きのうの朝降っていた
ここで注目してほしいのは、「未来」と「現在」の形です。日本語では、「明日雪が降る」「毎日雪が降る」のように、未来形(降る)と現在形(降る)は同じ形になります。したがって日本語では、「時・とき」を区分するのに、「過去」か「過去でない(「非過去」)」かを使います。
動詞「行く」の「過去」「非過去」を表にすると、次のようになります。
「普通体」
肯定・非過去 行く
否定・非過去 行かない
肯定・過去 行った
否定・過去 行かなかった
「丁寧体」
肯定・非過去 行きます
否定・非過去 行きません
肯定・過去 行きました
否定・過去 行きませんでした
では、今月の課題です。次はNHK「ごごカフェ」(2022/12/09)の対談(作詞家:売野雅勇さん)の一部です。下線の箇所はどんな「時」を表していますか?
「過去」「非過去」「過去の継続」「非過去の継続」で考えてください。
アナウンサー:売野さんが詩を書くときに、大切にされていることは何ですか?
売野: 「誰もが祝福されて生まれてきたんだよ」という気持ちで書いています。これが人生を肯定することにつながっているんです。
アナウンサー:作詞家人生をふりかえっていかがですか?
売野: 僕は直感だけ信じて生きてきましたが、それは人との出会いが良かったんだと思います。男も女も「度胸と愛きょう」ですね。