119)分かりにくい日本語

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 最近コラムなどの日本語の文章が、分かりにくくて困ることがある。特にOnline記事などにそういう場合が多い。

これは、2021/01/17、某有名雑誌のOnlineに載っていた記事の一節、「目の前にいる人を大事にしよう」である。

(下線を入れたところは私自身が意味の理解できなかった部分である。)

 

(1)たったひとりの人間との関係においても逃げ腰で落ち着きのない姿勢は、友人知人関係にも出る。自分と接しているときに、どこか上の空でキョロキョロと周囲に目をやっている人間など、ましてや無神経にもスマートフォンタブレットを弄(いじく)っている人間など、誰が本気で相手にするだろうか。目の前にいる人を大事にしよう。

それから、ギブ&テイクの関係でないと関わりたくない人間とは、最低限にしか関わらないことだ。そういう人間は、ほんとうは、あなたにとって必要じゃない。「こいつにならば与えて与えて与えても構わない、何も返ってこなくてもいい」と思えない人間とは、深く関わらないことだ。

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 私は一読したとき、分かりにくくていらいらした。外国人が書いたのかと思った。

気を静めてゆっくり読んでみると、ああ、こういうことが言いたいのだと分からないこともなかった。しかし、なぜこんなに分からない、回りくどい言い回しをするのかと、不思議な気分になったのも事実である。

 

 (1)を分かりやすく書き換えると、たとえば(2)のようになるのだろうか。(下線の部分は(1)とほぼ対応する。)

 

(2)1対1の時に見せる「逃げ腰で落ち着きのない態度」は、友人知人との関係においても出てくるものだ。

と接している時に、どこか上の空でキョロキョロと周囲に目をやっている人間、ましてや無神経にスマートフォンタブレットをいじくっている人間など、誰が本気で相手にするだろうか。

まずは目の前にいる人を大事にしよう。

また、ギブ&テイクの関係だけを重視する人間とは、極力関わらないことだ。そういう人間は、本当はあなたにとって不必要な人間だ

「こいつにならば、与えるだけ与えて何も返ってこなくてもかまわない」と思えないような人間とは、深く関わらないことだ。

 

 原文がどうして分かりにくいかはいくつかの原因があるが、最大の原因を2つ挙げられるだろう。

 

  • 使っている語彙・用語が曖昧で、厳密でない。(「姿勢」「自分」「ましてや」「最低限」など)
  • 否定「ない」を使った言い回しが多い。特に後半は「ない」が並ぶため、分かりにくくなっている。

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 原文は、思いつくままに書いているように見える。話したままの表現を文字にしたような感じがする。

 話すときにも、もちろん語彙や言い回しを工夫するべきだが、人が読むものとなると、的確な語彙や言い回しを使って、できるだけ簡潔な言い方で文を表す必要がある。

 思いついた語彙・言い回し以外にもっと適切なものはないかを注意深く探す。言い回しは不要な部分はカットして、できるだけ短く整える。

 この2つを注意するだけでも、簡潔で分かりやすい文はできるはずだ。

 文章を書きっ放しにするのではなくて、複数回自分でチェック(推敲)すること。読み手の立場になって、曖昧なところを見つけ出し、排除する。

 文字にする以上は、激励の文でも、アジテイトの文でも、感情過多の文でも、すっきりと、端的に、的確に表す、その努力が絶対に必要である。 

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