118)ズームデビュー

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 一時中断されていた小さな勉強会が、再開されることになった。勉強会といっても、最近は同窓会の色彩が濃い会である。

 このコロナ禍では以前のようにどこかに集まることができない。会のメンバーは10数人で外国人に対する日本語教育に関わる、または、関わった経験のある人達ばかりで、日頃はラインで結ばれている。

 メンバーの中から「オンラインで新年会をしようでは?」という提案があった。

全員が即座に賛成した。

 

 日本語教育機関では去年の4月ごろからオンライン授業が始まった。それまでは対面授業だったので、日本語教師であるメンバーは、この1年かなり苦労したようである。

  去年の4月上・中旬ごのろのラインでは、次のようなやりとりが交わされていた。

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「online授業の準備が大変です。皆さんはいかがですか?」

「大変!大学ごとに使う機能、WebexとかZoomとか。今格闘しています!」

「それは大変ですね。私はzoomだけでもアップアップしてます。」

「日々zoom,moodle,manabaの扱いにまだまだ慣れません。」

「zoom授業初日がやっと終わりました。IT超弱者の身にはホントにしんどいです。」

「私も今日Zoomを受かった授業の初日が終わりました。普段の授業の5倍ぐらい準備

に時間がかかっています。今週はしんどそうです。」

「そうですよね。そうですよね。オンライン、普段の何倍も準備に時間がかかりますよね。みんな一緒に頑張ってるんだ! よーし、もうひとふんばり。」

 

 それがである。

 

 オンライン新年会は今年の1月の下旬に行われた。幹事のOさんが中心になり、zoomを使ってミーテイングをセットする。

 Zoomミーテイング開催に対して自信のない人は誰もいなかった。

 

 一人だけ例外がいた。私自身である。

 

  彼らがこの1年オンライン授業で格闘していたとき、私だけが日本語授業から離れていた。自分でオンラインについて勉強すればよかったが、怠け者の私は、むしろオンライン授業など関わらなくてよかったと思っていたほどだった。

 しかし、それによって、彼らとの間に大きな差ができてしまった。

 

 オンライン会合当日は、画面ににこやかな顔が並び、背景に華やかな花々や雪景色を配している人達もいた。去年の4月にzoomにオタオタしていた人たちが、余裕をもって笑顔で待ち構えている。

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 ミーティングの初めに、それぞれが準備している飲み物で乾杯をした。

 今回はミーティングが久しぶりであるので、近況報告を中心に行うことに決まっていた。それぞれが自由に、時間制限を設けずに話してもらおうということになった

 

 合計12人の参加であったが、2時間の予定が3時間になった。午後2時に始まって5時に終わった。3時間一人一人の近況報告を聞くのは大変ではあったが、それぞれの話が面白く、また、ためになり刺激を受ける。

 オンライン授業が大変であることを訴える人もいたし、オンライン授業で出てきた質問や疑問を、他のメンバーに問いかける人もいた。

 オンライン授業は、対面授業でできることのほとんどをカバーできると言った人、オンライン授業では色々なことが工夫でき、これからも続けていきたいと言った人もいた。

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 彼らは新しい授業方法に苦労したが、それ以上の成長をしていた。

オンライン授業とは何か、そのメリット、デメリットなどを毎日考えながら、真剣に取り組んでいたのであるから、技術面に習熟していったとともに、オンラインによる日本語教育について深く考え、それに合った教授法や教材を作り出していった。

 

 私がオンラインミーテイングで感じたことは、彼らとの格差であったと言える。彼らは新しい授業方法で鍛えられ、生き生きしている。私だけが旧態依然であった。

 

 オンラインデビューで戸惑ったことは、いくつかあった。

まず、12人の参加者(自分自身も含めて)が一斉に私を見つめているということだった。落ち着いて考えれば、メンバー1人ひとりが、私と同じように12人の人に見つめられているのであるが、私には「全員に見つめられている」という感覚が強かった。その感覚のまま3時間ずっと緊張していた。

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 これはどう考えればいいのだろうか。

 皆も同じように、自分(だけ)が見つめられていると感じているのであろうか。それとも、慣れてくると、自分は参加者の一人だと気軽く思えるようになるのであろうか。

 

 近況報告が1時間延びて、すでに5時になってしまった。しかし、皆平気な顔をしている。今までの外での会合では、終了時間は厳守した。なぜなら、会場である町中の店から、皆は家に帰らなければならない。少なくとも1時間から1時間半はかかる。当時私は、主婦が大半であるメンバーに、遅くなって申し訳ないなあと思ったものだ。

 しかし、である。

 オンライン会合は終了しても、それから家に帰らなくてもいいのである。そこが家なのだから、終了と同時に自宅への到着ということになる。

 オンラインはこんなところにも便利さがあるのである。

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