外国人留学生の会話(2)として、「内向きの日本人」を3回に分けて届ける。これは新聞で取り上げられた「内向き目立つ日本」というコラムを読んでからのディスカッションである。日本人を内向きととらえているか否かについて、留学生の日常持つ考えや意見がよくわかる。
一言で集約すると、「日本人は外国人に対して、表面上は親しそうにして見せるが、もう一歩踏み混んで付き合おうとはしない」と考えているようである。この意見は多くの留学生から共通して聞く意見でもある。一方向的なとらえ方なのか、それとも、日本人の本質を突いているのか、興味深いところである。
司会Y:はじめに皆さんは、日本、また、日本人についてどんなイメージがあるかということを聞かせていただきたいと思います。
もちろん一言でもよろしいですが。はい。Fさん。よろしいですか。
F:日本人には親切な方もいれば、すごく冷たい人もいます。
司会Y:次はGさん、どうぞ。
G:私は今とりあえず、問題はありません。
C:私は日本人は表面的には人とのつながりを大切にしているんですけれども、心の交流はなかなか難しいと思います。
U:私は日本人は表面上は人間関係を重要視していますが、心の交流は少ないと思います。
S:僕の意見もほぼ同じなんですけど、表面的なやりとりはどの国よりもあついですが、心のそういう交流は少ないと思います。
司会Y:すみません、Jさん。
J:僕は日本人は決して内向きじゃないと思います。選択をして、友情関係というものを築いていく日本人、というふうに日本人のことをとらえています。
司会Y:Jさん、ありがとうございます。
はい、じゃ、新聞の記事、「内向き目立つ日本」という記事に入りましょう。
この記事は、東京大学の〇〇教授の研究室がアジア10か国を対象に実施したアジアンバロメータ世論調査という結果に関する評論ですが、その評論は、アジアの国々の国民性を比較しようとはじめて行われたものです。
各国とも、20歳以上の800人ずつから回答を得たものです。
内容のまとめとして、文章のいくつかの見出しを取り上げたいと思います。
まず、「見て見ぬふり多い」、それから「浅い近所付き合い」、それから「国際交流に消極的」、あと、「めだつ男性優遇」と「誇れない国、日本」です。
では、順に見ていきましょう。
「見て見ぬふり多い」ということは、ほかの人が困った状態に落ちても、自分とあんまり関係ないと思う人が多いということですね。
例えば、道に迷っている人を見かけたとき、助けるかという質問では、日本人は必ず助けると答えた人は37%しかいない。
浅い近所の付き合い、他者への関心の乏しさなども地域生活の中にも現れていて、近所付き合いに満足しているかどうかを調べると、日本は33%と最も少なかった。
では、アンケート結果の、日本人は人とのつながりが薄いとう論点に絞りたいと思います。
皆さんはどう思いますか。はい、Gさん。
G:私は日本はやっぱり複雑化した社会だから、そこでは仕事ややることが多くて、他人との関係を築くには あまり時間や余裕がないと思います。
F:日本人は人に絶対に迷惑をかけたくないという傾向があるそうですが、そのために、もしかしたら、日本、特に東京は、人に関わらずにも生活できるようにできているんじゃないかと思います。
司会Y:はい、Uさん、
U:日本社会では仕事が細かく分けられているために、多くの人は自分だけの仕事に集中してしまい、外のことへの関心がなくなったのでしょうか。
司会Y:Uさんの意見は、社会分業によって日本人は自分の仕事に熱中して、周りのことにあまり関心を持たないそう(→持たないようだ)ということですね。
はい、これについて皆さん、どうですか。Jさんはどう思いますか。
J:僕はその意見については賛成です。やっぱり日本は大人数で構える社会なので、いちいち周りを気にしていられないということが心の中に根付いていると思います。
で、それは、あの、切りがなくなるところから来ていると僕は解釈しているんで、それを冷たさというふうにとらえるのでなく、メリハリというふうにとらえています。
司会Y:さっきUさんのおっしゃったことは、社会から細かく分業された日本人は、自分の分野に熱中して、周りのことにあまり関心が持てないということですね。
これについて、皆さん、どう思いますか。
J:賛成です。大人数で組まれているんで社会の中で、やっぱりいちいち周りを気にしていられないというのが日本人にはあるんで、おそらく・・。
S:人間の交流を妨げるのであれば、やっぱりそれは社会の発展とは言えません。本来は、社会が発展するにしたがって、人間は気持ちがよくなる方向に行かなくてはなりません。
時間は忙しくなりますが、やっぱり交流の時間は必要だと思います。
司会Y:Sさんの意見は、社会が発展して分業が細かくになっても、それは必ずしも人間関係を薄くするものではないという意見ですね。
はい、これについてCさんはどう思いますか。
C:私はSさんの意見に賛成です。
日本は必ずしも社会分業の進んだ国とは言えないのに、ほかのアジアの国に比べると人間関係が薄い。
それは社会分業が直接、少なくとも一番大きな原因ではないからです。
確かに日本社会では、人と深く付き合っていこうという意欲がない人が多いと思いますが、それはアジアに共通した文化の考え方に原因があると思います。
昔から自分を保護しようとか、周りの危険から身を守ろうというアジア共通の考え方があって、あまり知らない人とか知らないことには手を出さないほうがいい、という考え方(→考え方が)生まれたのではないかと思います。
G:私はCさんの意見に賛成します。なぜかというと、日本人はやっぱり揉め事を起こすのは嫌いだという傾向があるようで、人との関わりが少なければ、揉め事を起こす機会もなくなる、このようにして結果的に日本人は、人とのつながりが薄くなったのだと思います。
司会Y:さっきCさんとGさんがおっしゃったことは、仕事の分業のせいじゃなくて、伝統的な考え方が今の状況もたらす原因になってしまったということです。これについてFさんはどう思いますか。
S:さっきCさんの言ったことは部分的に賛成ですけども、日本人にほかの人と交流する気持ちはないという点についてはなかなか賛成できません。
人間である限りどの国でも同じだと思いますが、ほかの人と交流する気持ちは強いと思う。
日本人にはそういう交流しようという気持ちがないというより、むしろ、そういう交流する能力をだんだんだんだん失っているのではないのかと思います。
司会Y:Sさんは交流能力ということを言いましたが、皆さんはどう思いますか。
F:私はSさんの意見に反対です。
なぜかというと、日本には人と揉め事を起こさないという伝統的な考え方がありますから。
もう一点付け加えたいんですが。
昔の生活は農業社会なので近所で生活すればいいんですが、そのことは強いんじゃないでしょうか。
今は工業化、産業化が進んでいる中で、通勤時間も長くなったし、人は自分の家の外で働き、働く場所でしか人と交流はできないと思います。
司会Y:Fさんはその原因は、近所の人と付き合うチャンスが少なくなっているということですね。
U:日本人の考え方についてですね、たぶん日本人は自分をしっかりさせて、他人のことへの余計な関心を抑えて、和を守るといった考え方を持つ人が多いのでしょう。
近所の噂にならないように、誰とも距離を保って、浅い付き合いをしたほうがいいという考え方が強いのかもしれません。
和を保つ気持ちを持ちながらも、自然に心からの付き合いが少なくなっていると私考えています。