49)外国人留学生の会話(6)余剰博士③

外国人留学生の会話「余剰博士③」をお送りする。就職と親との関係、企業の考え方、社会のとらえ方などを踏まえて、本人自身が学歴や仕事を通して自分をどう位置付けていくかに話が及んだ。

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市:sさん、何か意見ありますか、今のことで。もし、あったら。

s:中国はやっぱりそういう二極現象も深刻化つつ(→深刻化しつつ)あります。

あの、大学とか、特に今高校の先生も博士の要求(→博士号を必要とされている場合)もあります。

あの、もう一つのおかしい現象は、中国の博士(→博士号)より、外国の博士(→博士号)のほうがもっと人気あります。

だから、みんな一所懸命貯金して、それから銀行のところ(→で)ローンを借りて、外国に行って、アメリカとかイギリスとか、そこの博士号とってから、中国に戻って(→戻る)、これは(→が)一番理想的なことだと思われています。

また、同じの(→同じ)新卒だったら、院生のほうがもっといいと思われる企業が多いです。

大学の修士の新卒、同じ仕事経験ないと、修士の新卒と本科の新卒比べれば、修士の新卒のほうがもっと仕事見つけやすいと思います。

特に中国は人口が多いですから、また、大学は99年から、その学生募集拡大の政策が(→を)始めてから、大学は(→が)ほんとに普及されて(→して)きましたから、今も大学も、中国の社会では、それ以上の学歴、実は必要のない学歴ですけど、でも、それ以上の学歴がもっとほしい、そういういう企業も多いです。

市:全然話が違うんですけど、もし、あなた方が、rさんは家族持ってるけど、自分の子供には博士をとらせたいですか。仮の話で恐縮ですが。

s:私、もし子供を持てば、やっぱりその子供(→子供を)医学院に行かせて、博士までとりたい(→とらせたい)と思っています。

市:それで、大学の先生、それとも医学だからお医者さん?

s:ええ、そうです。お医者さんは博士を持ってる人が(→持っているので)、かんしゃ(→かんじゃ(患者))に対してはちょっと安心できます。

r:もし、私の子供が博士号をとろうとしていたら、まあ、それは反対はしないと思います。でも、できる限り、ちゃんとした自分の目的を持って博士号をとるようにさせたいんです。

ただ、就職ができないから、その(→そういう)いい加減な考えで博士号をとろうとしているなら反対して、ちゃんとした仕事を探す、探せ、探せるようにしたいです。

市:これも就職の話だけど、あなた方の国では、親がその子供の就職に関わりますか。

関わるというのは、何か仕事を見つけてやったりとか、手伝ってやったりとか、そういうのはどうですか。知っていることでいいんですけど。

s:私の周囲では、親は(→が)もしお医者さんだったら、子供(→子供も)医者になる比率がとても高いです。

は(→が)先生だったら、子供も親の紹介でいい高校とか中学校に入って、先生になる可能性も高いです。

私のような親は、何の背景も持っていない普通の家庭では自分(→親)も仕事探せなければ(→探さなければ)ならないんです。

市:そこでは親は何も言わない・・・。

s:いや、私自分やりたいこと(→ことと)やっぱり親との考え方(→考え方が)ちょっとすれちがって、そのとき(→そのときには)衝突もあります。

私の父は、安定の、女の子は安定の(→した)仕事やるほうがいいと思って、私、昔は教師やったときは、でも、私は先生という仕事あまり好きではない。結局はやめてしまって、そのときは家では喧嘩も行いました(→していました)

市:そうすると、やっぱり若い人達は自分の考えを持っているから、親が教師になったらいいって言っても、従うときもあれば従わないこともある。限界があるわけですね、親の力にも。

s:親はやっぱり子供の一生のこと考えますが、ほんと子供は大きくなったら頼りできないという現実もありますからね。

市:韓国も同じでしょうか。

r:だいたい同じなんですけれど、まあ、まだ、特に経済的な問題においては、親のほうが強い立場ですので、だいたいはその子供の考えを尊重して、その子供がしたいことをしらせる(→やらせる)ことが多いんですけど、もし、それが親と子供の間で意見がぶつかって、それが調整できない場合には、やっぱり立場が強いのは親ですので、結局は子供が自分の意志を曲げて、親に従うことが多いんです。

市:日本はどうなんだろう。日本はもちろんそういうふうに親に従う人も多いし、もちろんお医者さんの息子はお医者さんになることが多いけども、どちらかと言うと、本人の意志のほうが強いかもしれませんね。

ということは日本の親は甘いというか、任せてしまうというか。

じゃ、最後に、今までいろいろな事情を話し合ったけれども、今後、将来的にどうして行けばいいんでしょうね。

余剰博士がもう出るのは仕方がない、仕方がないからもう現状維持でいいっていう考え方もあるだろうし、それから、もうちゃんと決めてしまって、優秀な子、頭のいい人は博士のコース、普通の人はもう行かなくてもいいていう考え方もあるだろうし、そんなところはどう思いますか。

r:それは、あの、えー、まず、その、学生、その問題、余剰博士の問題について、政府が何とかして、何とかしてその問題を解決するの(→こと)もできると思いますけれど、それよりは、まず自分、その博士号をとろ(→とろう)としている個人が、その個人がその博士号をとることについて、それが自分の人生でどんな意味を持っているか、それについてちょっと考えた上でするなら、だいたいの問題は解決できるんじゃないかなと思っています。

目的がはっきりしていないからこそ、その博士号取得したあとにも、定職に就かない場合もあると思いますので、やっぱり、その個人レベルからその問題の解決を図るべきだと思います。

s:私から見れば、やっぱり社会の、社会の雰囲気とか、あの、政府とか、そのいろいろこと(→そのいろいろなことに)、あの、かわなければ(→かかわらなければ)なりません。例えば、社会、社会では必要がないという学歴がほしいという企業が(は/も)、ちょっとまた、企業としても真剣に考え直したほうがいいと思います。

また、政府機関も、その、政府機関じゃなくて、特にマスコミの報道ですね。あの、いつも博士はどのように立派ですか(→博士がいかに立派であるか)将来の進学、就職はどのように立派ですか(→将来の進学や就職いかに立派であるか)、そういう積極的なマスコミの報道がいっぱいがありますけど、だから、そのときも、ちょっとマイナスでも(→もっとマイナスの面も)報道するほうがいいと思います。

また、博士本人としても、ちょと(→ちょっと)自分の将来とか人生を真剣に考えたほうがいいと思います。

市: 企業が考え方を変えたほうがいいということですか。採用するときにですか。

s:特に、人事課の人が採用するとき、この職業だったら本卒も結構です。でも、どうして修士の卒業生もほしい、そういうとき考え方(→修士の卒業生がほしいときは、どうして修士の卒業生がほしいのかについての考え方を)、直した(→見直した)ほうがいいと思います。例えば、中国では今普通の事務、受付の人も本卒がほしいです。

女の子(→女子が)卒業してから、ただ受付をやるのはちょっと情けないと思います。そのときは企業の考え方もちょっと変えると・・

市:sさんの言いたいことは、もし修士の人をとるんだったら、その修士の人にふさわしい仕事を与えよっていうことですかね。

s:もし、受付だけの場合は、じゃ高校卒業生も採用できるように、企業ちょっとそういう考え方を(→に)変えるほうがいいと思います。

市: あと何か言い残したこととか付け加えたいことありますか。

r:これからの社会は科学技術の進歩によって、進むと思いますので、博士号取得者の役割は大きいと思います。

ですので、このような博士問題、余剰博士問題について、もっとマスコミとか企業とか政府とか、大学ももっと真剣に考えるべきだと思います。

s:やっぱり社会とか政府とか、そういう全体の雰囲気ではちょっと(→もっと)公平な環境を作ろうと思う(→考えた)ほうがいいです。

今の社会の雰囲気はあまり(→大変)不公平なので、だから、みんな就職するとき、女性の差別とかいろいろ問題があって、その点から考えれば、やっぱり社会全体の雰囲気や、公平な雰囲気を作って(→作れば)、いろいろ問題が解決できるかな(→のではないかな)と思ってます。

実は、学歴は高ければ高いほど、そういうこと、必ずしもいいことではない(→必ずしも高ければ高いほどいいとは言えない)と思っています。高校生(→高校生が)卒業すれば、高校生(→高校生に)ふさわしい仕事もありますから。本卒は本卒にふさわしい仕事もありますから。いろいろを考えて、自分なりの社会の地位(→社会での位置)を考えたほうがいいと思います。