48)外国人留学生の会話(6)余剰博士②

企業側は学生を採用するとき、大学院で博士号をとった学生を敬遠するという傾向が日本では見られる。今回の会話の参加者は韓国と中国の2人だけだが、日本と同じような傾向が見られるという。しかし会話両から、両国での事情が少し異なっているのがわかる。

会話は発話のままで、特に訂正は加えていない。2人の間には多少の日本語力の差がある。sは自分の意見や考えを的確に伝えるレベルには今一歩というところである。「市」は筆者自身で日本人である。

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市:ちょっと話がずれるんですけど、あの、公務員ていうのはむしろ尊敬されているんでしょうか。

s:今は、ちょっと尊敬されていますね。ちょっと新中国樹立後、直後の公務員考え方と、今の公務員の考え方全然違います。

あの、昔の公務員は、毛沢東の時代、そのときの公務員は、本当(→本当に)国民の公僕として働いていましたけど、今の公務員は、国民の地主みたいな感じを存在して(→感じがあって)、だから給料も高いし、あの、事務の(→事務をとる)場所もとてもいいし、だから中国のそういう大きな町とか土地とか行けば、一番いいところは必ず政府機関です。

r:まず、あの、科学技術分野においての政府機関というと、だいたい政府投資研究所になりますけど、そのような政府投資研究所の場合は、待遇が民間企業に比べて良くないほう(→良くない)です。

ですので、できれば民間企業のほう、民間企業の研究じょう(→じょ(所))に行きたいと思っているのが普通です。

市:rさんの場合は今特許の仕事をしている、rさんは仕事が見つかった運のいいほうですか。

r:そうですね、ま、卒業したあとに〇〇という、韓国では大手企業なんですけれども、そこで(→に)就職できて、そのあと、一応弁理士という資格を持っていますので、法律事務所にも、法律事務所に就職するのも、そんなに難しくはなかったです。

市:それは、rさんがやっぱり優秀だったんですかね。

で、さっきのsさんの中国の状況ですけれども、で、公務員になるために博士になる、でも、公務員は一定の枠があるから、あの、全員の人がなるわけにはいかないですよね。

で、そのなれなかった人達は、そうすると、ほかの、たとえば、4年終わった人達とかそういう人と同じような仕事になるわけでしょうか。

s:たぶん、大学の本科の卒業生と同じの(→同じ)出発点から就職するのはなかなか難しいですから、必ず(→絶対に)無理だと思います。

まずは歳の問題で、もうちょっと年上です(→少し年上になります)から、30代に近づいて(→近づいてから就職するのは)、特に女性にとってはなかなか無理だと思います。

だから、本科の卒業生といっしょに就職するのは無理です。

そのときやっぱり自分でローンを借りて、会社を作ろうと思っている人も多いです。

また、今、大、大学を通して、外国の大学行って研究続ける人も多いですから、そういう人は大学、とりあえず、大学、外国の大学に行って、何年間(→何年(間)か)研究を続けて、また中国に戻って、そのときは結構、社会に、社会の中に(→で)高いちいきを、高いちいきをもらえたりとか、高い地位をもらえたりとか、ちょっと派手みたいな感じです。

たぶんそのときにはいい仕事を探せるかもしれません。

市:あの、博士は余剰博士なんだけど、日本では修士を卒業して、で、一般企業に就職しようとすると、かえって企業のほうが歳もとってるし、使いにくい、長い間勉強してきたから非常に使いにくいという、そういうような企業の考え方もあるんですね。どうですか。

r:韓国では修士卒業者の場合には、そのように民間企業から嫌われていることではない(→嫌われるということはない)と思います。

修士、もちろん、あの、修士取得者の場合は、場合も、一応その分野の専門家になったとも言えますけど、博士ほどではないんです(→ない)ので、民間企業としては博士の場合より、そんなに負担を感じていないみたいです。

市:sさん、どうですか。中国でもやっぱり修士を出て、就職するという人達もたくさんいますか。

修士っていうのはちょっと中途半端ですよね。

s:そうですね。昔は、たぶん5年前は、修士が出て、そういう人達は、就職はとても簡単でしたけど、今(→今は)もうだんだん厳しくなってきました。

特に昔は、学歴社会のときは、修士がとても人気がありました。

今就職する場合は、本卒3年の経験が持てば(→あれば)修士卒業生と同じの待遇という企業が・・

市:本卒3年の経験ってどういうことですか。

s:本科卒業して会社で3年同じの経験を持ったら、修士の卒業生と同じの給料もらえるということです。

ほとんど今の修士が卒業すれば、理系の人はその会社に入って、技術専門の仕事をやっています。

文系の修士が(→を)卒業すれば、出版社とか新聞社とか、そういう結構やぱり(→やっぱり)政府機関と関係があるという、そういう、出版社か、そういうところに入って、あの、編集とか、そういう仕事を得る人が多いです。

市:私なんかの仕事の日本語教育では、先生になるっていうことですけど、教職ですけれども、今現在ですね、例えば、大学が新しく採用するときは、やはり日本語教育専門の博士を持ってる人がほしいんですね。

だから、前は修士でよかったんですけども、今は修士では不十分で、もう、博士を出た人が必要なんですね。

これは文系の話だけども、たぶん理系だと、研究所とかそういうふうになっていくと、専門化されていく。

専門の知識とか、専門の技術力が必要な部署では、博士っていうのはもう必ず必要になってきて、で、それ以外のところは、むしろ、もう博士とかは要らなくて、大学の4年が終わって、もうすぐ民間企業に就職するというような、そういう二極分化的なふうになってるんですかね。どう思いますか。

r:ま、韓国では、例えば、その研究じょう(→しょ(所)の場合には、やっぱり専門知識が必要になりますので、えー、できるだけ学位が高い、できれば、博士号を持っている人を採用して、採用しようとしているんです。

ですけれども、その博士号、博士号をとるのに、結構時間が韓国ではかかりますので、だいたい7年ぐらいはかかりますけど、え~その場合、その研究所に先に入って働いている研究者達との、あの、関係などがちょっと問題になっていて、それ、博士、博士号取得者を採用するに当たっては、それを一番悩んでいる状態だと思います。

もう一つは、その研究所が必要としている、その分野の博士が少ない場合があります。

もし、その分野、研究所が必要としている博士、その研究テーマと同じテーマについて博士号を取得した人は、人がいたら、その人はすぐ就職できますけれども、それ以外の研究テーマをしていた人はすぐには採用できないですので、それが、その研究所、研究所が必要としていることと、あの、実際に就職しようとしている博士が研究したことが合わない場合には、なかなか就職できない状態になります。