30)外国人留学生の会話(1)自分の呼び方②

 前回は「自分の呼び方」として「わし」「おれ」が中心に話し合われた。今回は「自分の呼び方(2)」として「わたし」、そして、「ぼく」の使い方が会話の中心になっている。

(Rは女子であるが、他は男子学生である。)

 

司会者D:場合(→状況)によって、「わたし」「わたくし」「あたし」「ぼく」「おれ」の使い分けをどういうふうにするのか。

ここで、皆さんはそれぞれの呼び方をどう使い分けているのですか。はい、Aさん。

A:私は、口癖のようにのことを「ぼく」と呼んでいます。

あの、今、Xさんですね。Xさんがおっしゃいましたが、「ぼく」には謙遜の感じが入っているとおっしゃったと思うんですが、謙遜というよりも、ただくだけた言い方だとずっと思い込んでいました。

皆さん、どう思いますか。

M:私は「ぼく」を使うと若い感じがしますね。

それぐらい。ちょっと爽やかな感じと若い感じがしますね。

別に謙遜という感じではありません。

X:「おれ」よりは「ぼく」のほうが少し謙遜しているかなと思いまして。

L:「ぼく」と「おれ」の使い分けについてなんですけど、「ぼく」という言葉に地方の影響もあるんじゃないかと思います。

あの、気のせいかもしれないんですけど、関西の人はあまり「おれ」って言ってることを聞いたことがないんです。

R:使います。(笑)

N:私もずっと九州に住んでましたけど、そこで1年ぐらい長崎の人と付き合って・・・。

ちょうどはじめて日本語を覚えた時期でしたけど、最初からだいたい教科書に書いてあるのは、「わたし」ですよね。

実際に使われている言葉を聞いて、少しずつ「ぼく」とか「おれ」とか使えるようになるでしょう?

私もずっと九州に住んでましたけど、長崎の人と付き合って、まず、最初「ぼく」って自分のことに対して呼びましたけど、少しずつ「おれ」っていう言葉を何回か会話に入れて、Nさん、それやくざの言葉ですよって言われました。

使わないほうがいい、で、それからいろんな人と話して、私は昔はそうだったかもしれませんが、全然やくざという関係はないと思いますので、どんどん使えるようになりました。

普通の会話だったらふだん「おれ」という言葉をよく使ってます。

「ぼく」っていう言葉はほんとに幼い感じがして、すごいいやになりましたね。

昔の私のことを考えるとほんとに恥ずかしく思います。

R(女):すみません、「ぼく」の話とはまた違うんですけど、私は自分のことを「わたし」と呼ぶんですね。

女の人が使う自分のことを指す言葉は、「わたし」「わたくし」「あたし」、あと「うち」っていう言葉もありますね。

それはちょっと地方の、関西の言葉なんですけど、やはり女性らしい言葉というか・・・。

無難な形では「わたし」が一番いいのかなと思うんですけど、友達同士で話すときは、「わたし」を「わたし」「わたし」「わたし」「わたし」って言ってるうちに、何か速くなってそれが「あたし」に聞こえることもあるようですが、無難な使い方としては「わたし」がいいと思います。

B:私もNさんと似ているんですけど、私は中国で10年間ぐらい日本語を勉強していましたが、日本語の教科書から勉強してたんで、ずっと自分のことを「わたし」と呼んでいました。

で、去年日本に来たとき、若い日本人の女性が、あのときぼくは、「ぼく」を使っちゃって(笑)、日本に来たばかりですけど、まだ「わたし」以外の自分を呼ぶ言葉は使い慣れていないので、友達と話すときもときどき「わたし」って言葉が出てくるんですけれども、彼女(若い日本人の女性)は「わたし」って言葉に違和感を持って、「なんでBさんは自分のことを「わたし」って呼ぶんですか。

あれは 女らしいですよ(→それは女みたいですよ)」って、そこまで言われたこともあります。

今はもちろん正式的な場合は、自分のことを「わたし」と呼ぶんですけれども、友達と話す場合は「ぼく」か「おれ」を使います。

K:私もBさんと似ているんですけど、私の国ではじめて日本語を勉強したときは、やっぱり教科書であるとおりに「わたし」って、「ぼく」って言葉は全然出て来なかったんですから。

日本に来て勉強を始めたとき、男性の若いクラスメートが、「ぼく」って授業のときにも先生に対しても使って、これを聞いてびっくりしたんです。

で、だんだん日本の生活に慣れながらクラスメートとか、友達と話する(→話す)ときも、今までも(→今でも)「ぼく」っていう言葉がさりげなく出てこない、そういうことで今まで(→今でも)ちょっと悩んでいます。

「ぼく」って言うと、何かちょっと恥ずかしい、自分にぴったり合わないという感じがして、

司会者D:やはり「ぼく」っていう言葉を子供っぽいと感じる人はいらっしゃいますか。

皆さんの意見から(→では)、「おれ」っていう言葉を聞くとやっぱり男らしさっていうことは感じるとというふうに、私は感じたんですけど、実際はそうですか。

そして、最後に「わたし」は丁寧な言い方だと思いますか。Eさん、どう思いますか。

E:私も男の人が「おれ」使ったら、男らしさを感じます。

日本人の友達が、最初は自分のことを「わたし」を(→と)言ってたとき、私は何か男らしくないと思いました。

それが、だんだん仲が良くなって、「ぼく」を使ったことはなかったんですけど、今は「おれ」とか「自分」を使っていますが、それは「わたし」よりはいいと思います。

R(女):個人差じゃないですか。

私の場合は、男の人が初対面のときに、自分のことを「おれ」って言っているほうが子供っぽく感じますね。

どちらかというとちゃらちゃらした感じがして、それに社会人になってから、上司とか、そういう公けの場所で、「おれ」って言う人はいないように、相手に礼儀を払っている感じとしては「ぼく」のほうがいいんじゃないかなと思います。

ま、男の方はそうでもないみたいですけど。

I:ちょっと、みんなに聞いたいことがあるんですけど、男が自分を「わたし」って言うとき親しくない感じがしますか。

L:あの、Rさんがおっしゃってることがわかりますから、男がやっぱり年がら年中「わたし」「わたし」「わたし」「わたし」って言っているとおかしいんじゃないかと思うんですね。

その人の趣味は何なのかと。

私はBさんと、Nさんと似たような経験がありますが、はじめて日本へ来たときに、教科書に載っている日本語でしゃべってたんですけど、誰かに、何でいつも「わたし」って言ってるんですか、女性っぽいなあって言われて、で、そういうこと言われると、じゃ、「おれ」を使い始めようかなみたいな感じで、「おれ」って言葉を使い始めたんですけど、でも、逆に「おれ」を使いすぎて癖になることもありますよね。

英語にはそういう区別はないんですけど、日本語では自分の呼び方に、もうほんとに注意払わないといけないんですよ。

K:私は「ぼく」と「おれ」と「わたし」の場合は、割とわかりやすいかもしれないと思いました。

それは、時間がどれくらいあるかによって進むことではないかな(→付き合いの時間がどれくらい進むかということではないか)と思いましたが、たとえば公式の場ではもちろん「わたくし」とか「わたし」になって、それがまだあんまり親しくないのに「おれ」とすぐ飛んだら、あ、ちょっと乱暴な言い方するんじゃないのと思われる可能性もあるし、それは人の癖によっても違うし、自分で決めることはできると思いました。

それで、「ぼく」と「おれ」と「わたし」の差がある程度あると感じましたが、女性が「わたし」と「あたし」と言うとき、言い分け(→使い分け)するときの違いは何か、私には全然わからないんですけど。

どうですか、聞いているほうからは、どういう感じですか。

L:私の場合はやっぱり先生に対して「わたし」と言います。うち(ホームステイ)のお母さんにどっちを使っても全然気にしないと言われて、何か「おれ」のほうやっぱり楽だから言ってるわけなんですよね。