1)朝ドラ「スカーレット」について

 今私は熱心にNHKの朝ドラ「スカーレット」を見ている。

 陶芸家を目指す女性を描いた作品だが、現在(2020年1月)は主人公喜美子が、陶芸家として芽を出す前の「もがき」が描かれている。

 夫八郎は新進気鋭の陶芸家でいくつかの賞をとっている。妻の喜美子はそれを見ながら自分も賞のとれる陶芸家になりたいと思っている。喜美子の陶芸家への熱望は非常に強く、まっすぐで、激しい。八郎は彼女が陶芸家になる夢を手助けしながらも、喜美子の激しさに戸惑いを感じている。

 同じ仕事を持ち、同じ目的に向かおうとする妻と夫のぶつかり、自己主張、競争心、いらだちなどなどを、水橋文美江は冷ややかに描いていく。

 私は喜美子に若いころの自分を見て、ドラマを見るのがだんだん辛くなってきている。自分の仕事のことしか考えなかった若いころの、自分の視野の狭さ、傲慢さ、こだわり、硬直した考え・・・。

 たぶん仕事一途だった沢山の女性が、私と同じようなことを感じているのではないか。

 70を超えた今なら、軟らかく考え直すことができる。

 「喜美子さん、そんなに片意地貼らなくてもいい。もっとやわらかく、楽しく、人の話を聞きながら進めていけばいいんですよ。」

 どうして人間は、こんなふうに一人勝手に、片意地張って、自分から視野を狭くして頑張ろうとする時期があるのだろうか。

 そして、そこにライトをあてた脚本家の勇気に拍手を送るとともに、もうこれ以上突っ込んでほしくないとも思っている。