テニスの大坂なおみさんが、被害を受けた黒人の名前を記したマスクをして、黒人差別に対する抗議を行った。日本では彼女の行為を支持する人が多かった。
最近は日本にもアフリカルーツの人が多く住んでいる。親はアフリカ人だが、日本で生まれ、育ち、暮らしている人も多い。彼らの多くは日本語が上手だ。
この9月の連休に、NHKは日本に生まれ育ったアフリカルーツの若者を集め、対談を行った。2,30分の短い番組ではあったが、彼らの話を聞いていると、日本人が未だに黒人差別とでもいうべき言動をしているのが分かる。
司会者の「いやな目に遭うことがありますか?」という質問に対して、何人かが次のように答えた。(M(男)F(女))
M1:街を歩いていたら、中年の女性に「冬なのになぜ黒人がいるの?」って大きな声で言われた。
M2:職務尋問されやすい。薬(麻薬)を持っていると思われるようだ。
F1:(元看護師):患者さんから治療を拒否された。
しかし、一方で、彼らの発言の中で、これを黒人差別と呼んでいいのかと思われるものも多かった。
F2:日本人は固定観念が強すぎる。「黒人は陽気な人達、歌がうまい、踊りがうまい、バスケットボールがうまい」と思っている。
F3:私は髪の毛が縮れているので、それを直そうと、子供の時からストレートパーマをかけていた。それを見た友達が、「なぜストレートパーマをかけるの?」と聞いてくる。
F4:日本人はすぐ、「日本語うまいね」「日本語、国へ帰ったら使うの?」と聞く。日本人の視線が疲れる。だから、私はあまり出かけない。
F5:電車に乗っていても、自分の隣に人が座らない。
F6:お店に行っても、私は日本語ができるのに、日本語で話しかけてくれない。
F7:すぐ「お国はどこですか?」と聞いてくる。珍しがられるのはいや。
F8:(店で)お箸で大丈夫ですかと聞く。「またか」ってなると疲れる。
M3:太陽が照っていたとき、日本人の友達が「黒くなっていやだなあ」と目の前で言った。悪気はないのだが。
M4:日本では「ブラック」という言葉が悪いことばかりに使われている。「ブラック企業」「ブラック産業」「ブラックマーケット」「ブラックマネー」など。
M5:日本人といっしょに何人かで話していても、他の人ばかりに話して自分には話しかけてくれない。
M6:(選挙が近い日に街で)選挙権がないと思われて、自分にはチラシをくれない。
F9:自分は小2まで自分の顔を描くとき肌色で描いていた。友達から「〇〇ちゃんの顔は肌色じゃないよ」と言われて、3年からは肌色で描くのをやめた。
これらの意見は「黒人差別」というには微妙である。「黒人」の代わりに「外国人」としても通じる問題が多い。そして私達日本人には、「えーっ、差別じゃないよ。そちら様が差別と感じてるだけだよ」と言いたいような発言もある。
この対談番組を聞いて私が直感的に思ったことは、「これは単に黒人・外国人の問題ではなくて、日本人どうしにでも起こる微妙な思い違いだなあ」ということだった。