133)大坂なおみさんとインタビュー

 

     

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 大坂なおみさんがテニスの試合後のインタビューを拒否して、罰金を科せられるというニュースが飛び込んできた。

 いくつかのツイッターのやりとりのあと、彼女が実はうつ病であったことがわかり、4大大会の関係者をはじめ各方面の人達が彼女に同情的な意見や考えを発し始めている。

  当初は彼女に対する批判が多く聞かれた。特に4大大会の関係者は、試合後のインタビューは選手に課せられた義務であり、多額の賞金はそれを含めての支払いであり、もしインタビューに協力しないのであれば、多額の罰金とともに、今後の試合参加の停止もありうるとしていた。

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 大坂なおみさんはハイチ出身の父親と日本人の母親の間に生まれたハーフである。スポーツ選手には珍しく社会的な発言も自由にする。当ブログ102、103「日本人と差別」でも取り上げたが、黒人差別問題にも被害者の黒人の名前を記したマスクをして試合に出るなどの意思表示をした。

 まだ23歳で若く、テニスの試合のない時には、花柄のワンピースを着てヘアースタイルも華やかに工夫するなど、おしゃれで初々しい女性である。

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 精神的には不安定なところもあるようで、試合でミスを犯したときなど、自分への腹立たしさであろうか、ラケットを地面に叩きつける姿も見られた。インタビューなんかでも気が向かないときは無表情で、ブスッっとしていることもある。

 

 人の意見は様々で、観客やファンあってのプレ―なんだから、観客やファンサービスは当然すべきで、彼女の考え方は甘いという意見もあった。インタビューが嫌ならプレーをやめたほうがいいという人たちもいた。

 私は最初から彼女の側に立っていた。契約など難しい問題はあるが、プレーヤーも人間なのだから、疲れていたり、心理的にもインタビューに答えたくないときもあるだろうと思った。彼女は愛想笑いのできない人だから、嫌なときははっきり嫌だという態度を示す。それは生意気だということではなく、彼女が正直だからなのだろうと思っていた。            

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 彼女に好意的な気持ちを持ち続けているのは、インタビューでの彼女のウィットに富んだ受け答えや、ツイッターの内容が彼女の知的さを感じさせるものであるからだ。

特に今回、4大大会の関係者からインタビュー拒否に対して強いメッセージが出たときの彼女のツイッターは短いが、考えさせるものがあった。

 

anger is a lack of understanding.

change makes people uncomfortable.                                       

 

 たったこれだけのメッセージである。日本語に訳せば、「怒りは理解の欠如。」「変化は人を不快にする。」とでもなろうか。英語ネイティブはどう受け取ったか分からないが、私はこの短いメッセージに彼女の知性を感じた。インタビュー拒否を痛烈に非難されて、それに対してくどくど言い訳がましいことを言うのでなく、だった2行、それも具体的でなく、抽象的に述べただけである。

「関係者が怒っているのは(私の)事情を十分に理解していないからだ」「決まっている事柄を変えようとすると、人はまず面白くないと思うものだ」というメッセージは、23歳の若い女性が、周囲の批判に対してすぐに出した返事としては、非常に思慮深い、教養のあるメッセージではないか。

 たぶん大坂さんは神経が繊細であるばかりでなく、色々なことが分かっていて、考えてしまうタイプではないか。

 

 彼女がラケットを叩きつける姿はあまり見たくないが、彼女を繊細な思慮深い、若い女性であるという見方をもう一度再確認したいと、自分では思っている。

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