198)温泉大好きユディさん

        

 フリージャーナリスト川口ユディさんは、ヨーロッパの温泉大国ハンガリーから来日。温泉大好き。アジア人の映画学校で学び、イリノイ州立大学芸術学部卒業。アメリカではエミー賞を受賞したテレビ番組「マジックドアー」の製作スタッフとして活躍した。

        

 これまで北海道から鹿児島まで、200か所以上で日本の温泉を堪能。露天ぶろや共同温泉に浸かり、会話を楽しみ、その土地の人の暮らしや魅力を感じてきた。

ユディーさんの、日本語はまだ完ぺきではないけれど、日本の温泉の楽しみや人々との触れ合いのお話をお楽しみください。 

    

 「ハンガリーの首都ブタペストは、ドナウの真珠と呼ばれるステキな町。こんなきれいな町に住んで  いてよかった。ハンガリーは火山が多いので、温泉が多い。特に首都ブタペストに温泉が一番多い。

 「背中が痛い」と言って病院へ行くと、医者から「あの温泉のあのお湯に一日2、3時間入ってください」と言われる。全部保険付きだから、ハンガリー人にとって温泉は、病院みたいなところ。

 日本へ来て最初にはまったのは、秋田県乳頭温泉秋田県に入ると、ブナの森がすごい。「熊注意」が出ている。露天風呂に熊が来る。

        

 乳頭温泉は露天風呂。お湯が素晴らしい。お湯の色が真っ白で、ミルクのような濁り湯。硫黄の匂いがする。乳頭温泉は20回ぐらい行った。

 茨城県に住んでいた頃に、福島県宮城県に行った。東北大震災後は、夫婦で秋田とか青森とかにも行った。夫婦2人で東北を守るなんてできないけど、でも、行って行って行きました。

 地方に住んでいるお年寄りは文句を言わない。年寄りだけでなく、本当の日本人は文句を言わない。可愛くって楽しい。息子とは会えなくても、「(息子は)忙しくて、頑張っている」と言う。

        

 日本では普通に裸で温泉入って、裸の付き合いをする。私は最初ちょっと抵抗があったけど、今は大丈夫。色んな年齢の方の体を見ると、私もこうなるというのが分かるし、また、こうならないようにしないといけないというのも分かる。おばあちゃんが「ひざが痛い」と言うと、ああ、ひざは大事だなということが分かる。裸の付き合いで人生の流れを感じる。

 ハンガリーは気温が低いから、人はプールみたいに泳ぐ。泳げる温泉もあるけど、冷たいから寒くなる。だから裸で入るより水着を付けて入る。

 日本の温泉は日本の宝。気持ちがいい。暖かくて、素晴らしい景色も見える。会えない人とも会える。よく眠れる。

 日帰りは料金も安い。高級な旅館でも入浴だけなら安い。共同浴場も手作りで、面白い。パイプが出たままで、音もうるさい。普通だったらパイプを隠すのに、隠さない。それがまた面白い。個性があって、小さくて、面白い。

        

 共同浴場も、匂い、見た目、温度差など、信じられないくらいタイプがある。100歳まで温泉に行っても、すべての温泉は回れない。49℃の温泉にも行ったこともある。

共同浴場をまとめて、1か所の浴場にする町が多い。温泉がだんだんなくなるので、寂しくなるから早く訪ねなくてはいけないと思っている。

 

 コロナの前はアジアからの外国人が多かった。それが全部なくなっているから、収入がない。そのうえ日本人も行かない。ゴールデンウイークでも日本人は海外に行きたい。なんで海外へ行きたいかよく分からない。日本を旅してくださいと思う。

    


 外国人は皆日本へ行きたいと思っている。世界の調査によれば、一番行きたい国は日本ですよ。どこの国の人も日本へ行きたい。

 東京や大阪に住んでいる日本人は、九州を見なければいけない。景色が違うし、食べ物が全然違う。その町には名物がある。こういう饅頭、ああいう饅頭、こういう醤油、ミカンジュースとか、その町でしか飲めないものもたくさんある。これらも他の国にはないと思う。

 同じ県でもみんなプライドを持って、自分の名物を作っている。それぞれ違う名物がある。旅に行けば楽しいと思う。

 

     

 

温泉行くだけじゃなくて旅を楽しむ。景色を見て、おいしい名物を食べて、温泉に入って、歴史もちょっと分かるようになる。弘法大師がここに来たとか、有名な侍がここに来たとか、いろいろ分かる。100歳まで生きていても、まだまだ足りない。

温泉地では、後継ぎがいないという問題や、経営者の高齢化もある。旅館も多いし、温泉も多いのだが、若い人たちが後を継がない。そこまで興味がいない。後継ぎを探すサービスもない。ドイツでは、息子や娘がいないとか、後継ぎする気がない時は、「こういう事情で後継ぎがほしい」という応募をかければいい。

旅館を閉めるより、続けたほうがいい。旅館は日本の歴史です。これからも外国人がたくさん来るし、外国人は都会より田舎へ行きたい。大きい新しい旅館を作るより、日本的な小さい旅館を作ったほうがいい。

 

     

 

 今まである古い旅館が一番いい。布団を敷いたり、そんなことは大丈夫。不便じゃないと思う。

        

外国人が歩いて、四国巡ってますよね。私達も行った。不便だけど、楽しい。

いろんな外国人がいる。大学生もいるし、高齢、カップルもいるし、いろんな趣味の人もいるけど、間違いなく、世界の人は日本の良さを感じると思う。

 

     

 

 自然のきれいさ、山はとてもきれいだし、ヨーロッパの山と違う。海ももちろん違うし、植物も違う。もしかしたら、熊が出てくる。こんな近代的な国に熊が住んでいる。熊に遭いたくはないが、すごいじゃないですか。

 この前、九州の旅から2週間ぶりに戻ったけど、その夜にはもう次の旅のことを考えている。資料がいっぱいあって、徳島へ行こうとか、次、次、次の資料がいっぱいあって、仕事しながら温泉というか、安いところに泊まったりとか、日帰り温泉に行ったりとか。

 でも、たしかにお金をいっぱい使っている。ま、日本のためだからいいですけど。そのために働く、働いた給料を全部温泉に使っている。

みんなにも行ってほしい。たくさんの温泉のどこでもいい。悪い温泉ないから。

 日本人は働き者。ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんもすごい働き者だった。今の年寄りもそう。小さい体は一生懸命働いたから。私達はその労働のおかげで生きている。

         

年寄りは日本の宝物。東京では年寄りと会うきっかけはない。でも、温泉では何でもしゃべれる。日本を支えている人達はこの人達ですよ。