266)『どうせ死ぬんだから』を読んで

 老年学が専門でもある和田秀樹氏の本は今までに何冊か読んでいる。共通しているのは、新書版なのに字が大きくて、隙間が多くて、太字が目立って、「これは、普通の文字の大きさと行詰めなら、本、半分ぐらいの量しかないなあ」と思わせる。ゆったりと、余白ある紙面に、話し言葉が遠慮なく迫ってくる。

 

         

 

 タイトル『どうせ死ぬんだから』も、編集者が決めたタイトルかもしれないが、普通なら禁句に近い表現だ。

 しかし、読んでいて、「なるほどな」と思わせるのが和田秀樹氏のやり方である。的確なのである。もっともなのである。

 

          

 

 本の中で、まず、ぐっと刺さったのはこの言葉である。

 

大事なのは、「長生き」ではなく、「長生きして何がしたいか?」

 

 和田氏の読者への提言の一つは、「ぜひ長生きして良かったと思えるものを作ってください」。

 自分の経験を生かして社会に貢献をする、夫婦で温泉旅行、趣味の写真を撮り続ける、など。自分が楽しいと感じることなら何でもいい。

「リビングウイル」(遺書)など、人の心はくるくる変わるから、その都度書き直せばいい。

 

和田氏は続ける。

 70代の過ごし方が大切。脳の機能を80代以降もどうやって保つか? 同時に70代に持っていた運動機能をいかに長生きさせるか。

個人差の原因は、体や頭を使い続けているかにある。高齢者にとって「脳機能」「運動機能」を「使い続ける」ことが重要で、使えば使っただけ、老化を遅らせることができる。

 マイナス思考になった時は、「なんとかなるさ」とつぶやいてみる。

 

認知症については、

・年をとれば認知症は避けられない。

・でも、高齢になると、ゆっくりとしか進行しない。

だから、この2つの原則を認めて、「なったら、なったときのこと」と開き直る。

 

       

 

うつ病については、

・「うつ病」は、「認知症」よりこわい。

・高齢になればなるほど、心と身体の結び付きが強くなる。つまり、心が弱くなると、身体が弱くなり、逆に身体が弱くなると、心も弱くなる。

 

       

 

和田氏は介護問題についてもこう述べている。

・約8割が人生の最後を「自宅」で迎えたいと答えている。(2017年度厚生労働省調査)

・そして、避けたい場所として、42.1%が「子の家」を挙げている。

・高齢者が重視するのは、家族等の負担にならないことである。(95.1%)

 

 一方で、子供世代の35~59歳の男女は、85.7%が、「(親が)家族等との十分な時間を過ごせること」と回答している。つまり、親世代は子供に迷惑をかけたくないと思い、子供達は親を大切にしたいと思っている。

 

         

 子供世代が、親を介護したい、介護すべきだと思うのが常であるが、しかし、和田氏はその考え方に警鐘を鳴らす。

 

・「在宅介護は日本の美風」なんて真っ赤なウソである。

・私が施設介護をすすめる。その理由は、

 日本には、「自分の親だから、子供が面倒を見たほうがいい」「縁あって連れ合いになったのだから、子供が面倒を見るのは当たり前」という考えが残っている。しかし、少なくとも、義務感で在宅介護を選ぶのはやめたほうがいい。

・なぜなら、介護は一人で抱えきれるほど、生やさしいものではない。

・むしろ、身内は介護される側の精神的なケアに重点を置き、どのような介護が最適であるかに専念したほうがずっと合理的で、お互いが良好な関係でいられる。

 

そのためには、

介護保険制度を知り、大いに利用すること。

最も軽い要支援1でもある程度の支援はしてもらえる。

・地方への移住、地方で施設に入るなどは、慎重に考えたほうがいい。交通手段がない、買い物に行けないなど不自由が起きる。

・何でも気軽に相談できるケアマネに出会えれば介護は一気に楽になる。

・情報はできる限り集めて、人生の最後の場所を穏やかに過ごす場所として、施設と在宅それぞれのメリット、デメリットを考慮しながら、無理のない決断をすること。

 

    

 

・老いていくということは、誰かに貸しを返してもらうこと。

・卑屈になることはない。人生の終盤は、堂々と社会に貸しを返してもらうつもりで、迷惑をかければいい。

・日本の高齢者は気が弱い。

・財産を子供に残すために自分がしたいことを我慢するというのは、本末転倒である。高齢者はどんどんお金を使い、消費者として死ぬまで「現役」でいる。高齢者には、未来の日本を救えるだけのパワーがあるという自信を持って、堂々と現役でいること。

・ワガママ老人が元気で長生きする。

 

        

最後に和田氏のまとめ「極上の死に方」を示す。

 

ご 極上の死を迎えるために、自分が納得のいく生き方を貫き通す。

く 苦しいことやわずらわしいことは、できるだけやらない。

じ 自由気ままに暮らす。我慢すると心身ともに老化が加速する。

よ 要介護になったら残された機能と介護保険をフルに使い、人生を楽しむ。

う うかつに医者の言うことを信じない。治療も薬も選ぶのは自分。

の 脳と体を使い続けて、認知症と足腰が弱るのを防ぐ。

し 死を恐れれば恐れるほど、人生の幸福度は下がる。

に 人間関係が豊かなほど老いは遠のく。人づきあいが億劫になったら、ぼける。

か 身体が動かないとき、意欲が出ない特は、「なんとかなるさ」とつぶやく。

た 楽しいことだけ考えて、とことん遊ぶ。どうせ死ぬんだから。