某スポーツ紙に「オレンジ五行歌」というコーナーがある。読者が五行歌を自由に応募できる。匿名も可である。
インターネットの説明では、「五行歌は、日本のこれまでの詩型から新しく考えられた自由で、書きやすく、また完成しやすい短い詩の形」だという。
五行歌五則があり、それに関わった、つまり、五行歌の創始者が、当コーナー選者の草壁焔太(えんた)氏である。
平成20年9月制定の新々・五行歌五則は、少し簡略化したが、次のようである。
1.五行歌は古代歌謡に基づいて作られた、新形式の短詩である。
2.作品は原則として五行からなる。
3.作品に詩歌らしい感じを持たせること。
4.内容などに制約をもうけない。
5. 省略
某スポーツ紙で時々読むことがあるが、熱い恋の詩が多く寄せられている感じがした。
次の五行歌は、ある日に掲載された2作品である。五行歌1と2は男女間のことを歌っているという点では共通であるが、内容は大きく異なる。
五行詩1
結婚したら
配偶者より幸せに
なってはいけないというルールを
TV番組で知って
純文学より感動する
大津 野田 凛
これに対する評者(草壁焔太氏)の言葉は次のようである。
「ああ、そうなのか。相手を不幸にしないように気をつけよう。」
私はこの歌をはじめて読んだとき、胸にじんと来た。「そうか、こういうルールがあるのなら、従えばいいんだ。」
夫婦がそろって有能であれば、夫婦間で競争心のような気持が湧くことがある。相手の
昇進や出世(=幸せ)を喜びながら、自分はどこかで焦りや悔しさを感じることがある。
しかし、賢い夫婦はそれを適当に抑えながら、また自分に言い聞かせながら、日常生活を円満な形で続けていく。
もし「結婚後は、配偶者より幸せになってはいけない」というルールが、幸せな結婚生活を続けるための知恵(哲学?)としてあるなら、どんなにほっとするであろう。
相手に対して競争心を持つ必要がないのだから。
純粋に相手の幸せを喜び、愛し合っていけるのだから。
これは純文学に匹敵するぐらい純粋な愛なのかもしれない。
五行詩2
俺ほどお前を愛する
男はいない
愛が得られなくても
愛し続ける
これが人を愛せる男だ
東大阪 北風 徹
評者の言葉
「ひさしぶりに男らしい歌を見た。」
五行歌2は余りに濃すぎる歌なので、私などは苦手だ。評者は「男らしい」と言うが、本当に男らしい人がこんな歌を作るだろうか。面と向かってこんなことを言われたら、気持ちが悪いと思ってしまう。
この歌では、比較表現の最上級を使って、自分のことを自慢している。最初の2行がそうだ。そして、最後の行の「これが人を愛せる男だ」で、「愛せる」という可能形を使って、ここでもまた自分を自慢している。
この歌は、男らしい愛の告白というより、自分を前に押し出した、攻撃的、独りよがりの詩のように、私には思える。皆さんはどうだろうか?