180)「山原」は「やんばる」と読む!

 4月からNHKの朝ドラの新シリーズ「ちむどんどん」が始まった。

 「ちむどんどん」の「ちむ」は主に「心」を表し、「どんどん」は「胸が高なる様子」を指す。全体では「胸がわくわくする」という意味を表す。

 沖縄の北部「やんばる」地域が舞台で、そこに住む3人姉妹の女の子が主人公である。 

        

 「やんばる」は山原と書く。文字通り、山や原っぱなど、自然が多く残されているエリアのことを指す。

 そういえば、「ヤンバルクイナ」という鳥の名前も過去に何度か聞いたことがある。

        無料イラストヤンバルクイナ に対する画像結果

 地形的には、「やんばる地域」を含む北部周辺は、沖縄本島で最も高い与那覇岳(503m)など標高400m以上の山地が、島の中央部に向けて背骨になっている。

 

      

 

 私は沖縄は2回ほど旅行したが、いずれも名護市止まりで、その北部の「やんばる」にはまだ行けていない。

 

 私は生まれも育ちも大阪であるが、福岡県で留学生に日本語を教える仕事をしていたことがある。

 ある時、授業で、宿題として作文作成をさせた。提出された作文のチェックをしていた時、ある留学生が「前原」のことを「まえはる」と書いているのを発見した。

 その当時、私は「原」を「はる」と読むということを知らなかった。それで、彼が書いた「まえはる」をすべて「まえはら」と訂正した。

 知らないということは恐ろしいが、その時は当然のことと思っていた。

 

 翌週は祝祭日だったため、私は作文を返却してもらうよう、非常勤の先生に頼んだ。

 

 次の日の夕方のことである。非常勤の先生3人が私の研究室にやってきた。有能で誠実な人達で、私も信頼を寄せている人達である。

 

        イラスト話し合い に対する画像結果

 

「先生、この「~原」ですが、このあたりでは「ばる」とか「はる」と読むのです。だから、学生が「まえばる」と書いたのは、間違いではないのではないでしょうか?」

 

 彼女達は上司に訂正を申し入れるのであるから、恐縮しながら、恥をかかせないように、しかし、笑顔を見せながらそう言った。

 

 私は最初は信じられなかったが、あとで辞書や百科事典を調べると、彼女たちが言っていることが正しいことが分かった。九州北部や沖縄には「~原」という地域が見られ、それらは「~はる」または「~ばる」と言うのだそうだ。

「前原(まえばる)」、「春日原(かすがばる)」、「西都原(さいとばる)」などである。

 

 ウエブのT-maru's Home Page / 尚智庵の調査によると、「ばる/はる」と読むのは全国で99か所あり、そのうち97か所が九州・沖縄であった。

 福岡が圧倒的に多く27か所。上記のもの以外に「飯原(いいばる)」、「荷原(いないばる)」、「柿原(かきばる)」、「春日原(かすがばる)、「上原(かみはる)」、「九郎原(くろうばる)」、「黒原(くろばる)」、郷原(ごうばる)などがある。


 沖縄は8か所で、「伊原間(いばるま)」、「西原(いりばる)」、「宇栄原(うえばる)」、「運天原(うんてんばる)」、「桃原(とうばる)」、「南風原(はえばる)、「南桃原(みなみとうばる)、「与那原(よなばる)」がある。

 

 「T-maru's Home Page / 尚智庵」では語源についても調べておられ、(1)韓国語・朝鮮語起源説 (2)古日本語説 (3)その他の説を挙げておられる。「~原」の付く場所は、平野部か山間の盆地か、いずれにせよ平な場所に多いという。

 

 朝ドラ「ちむどんどん」では、「やんばる地域」、「やんばる村」、「山原高等学校」「やんばるそば」という名前が映像に映ったり、聞こえてきたりする。「やんばる」という呼び方を聞くたびに、九州勤務時代を、甘酸っぱく、また、なつかしく思い出す。