210)横浜ハンドメイドマルシェ

        

 「横浜ハンドメイドマルシェ」が開かれるため、夫と2人で出かけていった。娘が趣味で絵本を作っており、店舗を開くからである。

「マルシェ」というのはフランス語で「市場」という意味である。「ハンドメイド」なので、素人の、主に若い人達の手作りのアクセサリーやファッション関係品などが売りに出される。(一部でプロも参加している。)

 横浜の「みなとみらい」駅から歩いて数分のところに会場がある。会場のすぐ近くにはランドマークタワーがあり、赤レンガ倉庫も近い。港には帆船が停泊している。

イベントは横浜マルシェの1階ホールで開かれ、1600のショップ(店舗)が開かれる。

 

        

 

 私達の一番の失敗は、娘に彼女の店舗の位置番号を聞いてこなかったことだ。会場で探せば、すぐ見つかるだろうと高をくくっていたが、1600店舗から探し出すのは至難の技であった。携帯をかけても、一向につながらない。呼び出し音もかき消されるざわめきである。

 1時間ほど探し回った。

 以前は仕切りの板があって、小さいながらも一つの店舗という形がとられていた。今回はその仕切りがなく、連続的に展示品がざーっと並ぶという感じである。

 探し回っているうちに、いろいろの店舗を見て回ることができた。横目でチラチラ見るだけだが、それぞれの店がキラキラと、商品がお客さんを引き付けるように並んでいる。商品はガラクタではなく、それぞれ個性的に、可愛らしく、工夫されたものばかりに見えた。

      

 

 娘の店舗はいつものように絵本が並べられ、ハンガー吊りに20数枚のTシャツが吊り下げられていた。他のキラキラ店舗に比べると、やや地味なお店である。

娘の話では、その日の売り上げは芳しくはなかったようだ。絵本はそこそこ売れたが、絵本に合わせて作った、アップリケ付きTシャツはほとんど売れなかったらしい。

          

 

 短時間しか娘の店舗を見る時間はなかったが、こんなふうにしたほうがいいのではないかと思うことはあった。そのいくつかを書いておこう。

 

1)もう少し値段を下げてはどうか?

 絵本は通常のものが500円で、ルミネ―トフィルムが貼られた絵本は千円。フィルムが貼られている方が頑丈で、持ちがいい。破れにくいし、濡れても大丈夫だ。保育園では人気があるそうだ。

 半袖Tシャツは1500円、長袖は2千円。アップリケはフラップ(ふた)が付いて開けたり閉めたりできるものや、サンタクロースが飛び出してくるものなど、いろんな工夫がされている。とても可愛いのだが、「洗濯」はどうするのだろうと、ちょっと心配になった。

     

 もちろん市販品は、絵本にしてもシャツにしても、その倍以上はするだろう。しかし、会場に来ている人達はほとんどが若い女性で、何かお値打ちの、安くて楽しい「小物」があれば買ってみようという人達である。千円も2千円も出して、絵本やシャツは買いたくない。

 もし彼女達にアッピールしたいなら、「売ろう」という考えは捨てて、値段を下げたほうがいい。千円ではなく800円に、1500円ものなら1200円にするとか、2千円なら1700円にするとか、ちょっと手の出しやすい、微妙な値段の付け方を工夫したほうがいい。

 

2)展示の仕方を工夫する。

 どうすれば通りすがりのお客さんが来てくれるか? どうすれば彼女らが足を止めそうなアッピール度の高い展示になるか?

 展示全体を、平面ではなく、立体的にしてはどうか。絵本をベタに並べるのではなく、立ててみる。立てて、絵本の楽しそうな内部を見せるようにする。また人を引きつけそうなページを拡大して、絵のように飾るのもいい。絵本の周りにキラキラ飾りを付けてもいい。

         

 平凡な並べ方では、人の目を引かない。

 

3)常連さんを大切にする。

 常連のお客さんには100円でも200円でももっとサービスしてあげてはどうか。何かお土産を付けるのでもいい。もっと話しかけて、会話の時間を持つ。感謝を込めて、常連さんを大切にしたほうがいい。

 

4)声のかけ方を工夫する。

 「男はつらいよ」の寅さんではないが、人なつっこく、訴えかけるような態度を見せること。

        

 今回冊子を作ったのは良かったが、単に渡すだけでなく、客をつかまえて、もう少し引っ張る。話を展開させて、相手にもどんどん喋ってもらう。これは経験ある、また、話し慣れた(おしゃべりの)年配者を見習うとよい。

 

私が、店舗を開いている娘に言いたかったことの中核は、

 

★「売ろう」とするのではなく、会場に来ている人達にどうしたら喜んでもらえるかを、もっともっと考えて工夫をすること。

★ サービス精神をもっともっと発揮する。「お客さんと楽しく話す時間を持てる」ということに重点を置いて、いつもお客さん中心に物事を考えること。

 

である。これは、もしかしたら、長い経験を経て分かってくることなのかもしれないが。