今年はコロナに振り回された1年ではあったが、野球界では大谷に始まって、大谷で終わる一年でもあった。大谷の、あの爽やかな笑顔と振る舞いに何度も励まされた。今日は大谷さんにちなんで、かの地で使われている野球英語(アメリカ英語)を覗いてみたい。(英語が苦手な人もどうぞ!)
「夕刊フジ」に大谷翔平さんについての小さなコラムが載った。まず英語が来て、そのあと、日本語訳、日本語解説が載っている。
英語を見たとき、私はため息をついた。
「ああ、この英語では全く分からない」
たった2、3行の、一見簡単そうに見える英語なのに、私には意味がさっぱり分からなかった。語数は30語、知らない単語はほとんどない。
くやしいから、よし、挑戦してみよう。
まずコラムは次のとおりである。(写真と同じ)
夕刊フジ8月12日
I didn’t bury that he hit out, I wish I got that pitch back and could get it in the dirt and for him to swing over the top of it.
【日本語訳】
「打たれたのはスライダー。低めに投げ切れなかった。できれば、あの1球をもう1回投げ直し、地面に叩きつけるくらいの球にして、空振りさせたかった 」
【解説】独立記念日の7月4日、エンゼルスの大谷翔平(27)に31号ソロを本塁打を打たれたオリオールズ先発、トーマス・エシェルマン(27)の嘆き節。カウント2-2からの5球目、78マイル(約126キロ)のスライダーは低めに行った、大谷はこれを苦もなくすくいあげ飛距離459フィート(約140メートル)の特大アーチになった。(以下省略 阿部耕三)
英語の解説をやってみよう。
動詞が難しそうなので、まず動詞から考えてみる。
「bury」は高校時代に習っている。何かを地面などに埋めるの「埋める」だ。「私は埋めなかった」? これでは意味が通じない。
次の「hit」は日本語でも「ヒット、ヒット」と言うように「打つ」だ。でも、「hit out」って何だろう?
「pitch」はピッチャーのピッチで「投げる」。でも、「pitch back」は?
「swing」は「振る」。でも、「swing over」は?
英語は、動詞が単独に用いられるより、「動詞」+in, out, of, over, for, backなどの小さな語がよく付く。それを動詞句と言うが、動詞句になってはじめて意味を持つ。
学校では動詞句のようなものはあまり習わなかった。しかし、実際には話し言葉であればあるほど、動詞句がよく出てくる。
「get」の意味も分からない。「get it in the dirt」は?
「dirt」は「泥」という意味は過去に習ったような気がするが、辞書を引くと、イギリス英語では「earth」、米語では「土」。つまり、「泥」ではなく、「地面」の意味だ。
コラムの翻訳に沿って、動詞・動詞句だけでも訳してみよう。
bury:低めに投げる
hit out:強く打つ
get that pitch back:投げ直す
get it in the dirt:地面にたたきつける
for him to swing:彼がバットを振る
over the top of it:バットの上(を)
こうやって1つずつゆっくり意味をとっていけば、何となく意味が分かってくるが、コラムの翻訳文のように生き生きとは訳せない。
教科書英語があって、町で話される会話英語があって、それはまるで別物なのだから、日本人がアメリカ人のベラベラ英語を分かるのはなかなか難しい。
(たぶん逆のことも言える。教科書で日本語を勉強した外国人が、日本へ来て日本人がしゃべる会話日本語は、やはり理解が難しいことだろう。)
インターネットにJJさんという男性がJJ Englishなる動画をアップしている。英語のコーチング専門の方らしい。彼はメジャーの野球中継の1シーンのアメリカ英語を日本人に分かりやすく説明している。彼の仕事と関係しているのかもしれないが、日本人の分かりにくいところを、丁寧に解説してくれる姿には感謝し、感動する。
野球英語に関心のある人は、ぜひ動画をご覧ください。