2020オリンピックの開会式については評価は大きく分かれた。元々オリンピック開催に反対していた人々は、つまらなかったとか面白くなかったと言い、賛成派を含めて中庸の人々は、地味だったが良かったと評価した。
日本人は何事にも人の評価を気にする。自分で決めたことなのだから動揺しなくてもいいのに、人が悪く言うと落ち込んでしまうし、良く言うと成功したなどと思ってしまう。
日本のマスコミも同様で、まず気にしたのが海外の評価であった。
開会式の当日新聞やSNSで報じられたのは次のようであった。
日テレNEWS24（2021年7月24日 0時33分）は、次のように紹介した。
『先ほど終了したばかりの東京オリンピックの開会式について、海外メディアは「控えめなセレモニー」などと伝えています。無観客で行われた開会式について、アメリカのＮＢＣは「今までとまったく異なるオリンピックが、見たこともないような開会式で始まった」と伝え、ＡＰ通信は「カラフルではあるが、妙に落ち着いたセレモニーが、独特なパンデミックの中でのオリンピックにふさわしい雰囲気を醸し出した」と伝えました。
イギリスのガーディアン紙は、「非常に控えめなセレモニー」と表現し、ＢＢＣの解説者は「観客のいない空っぽなスタジアムでアスリートはどう感じているのかという視点で見ている」と話しました。』
このように見てくると、海外メディアは大好評とは言わないまでも、「控え目で、落ち着いた雰囲気」な開会式であったと、一応は評価していた。
一方、日本国内ではビートたけし氏の反応が、私の耳に突き刺さった。彼は24日TBS系「新・情報7days ニュースキャスター」で開会式を痛烈に批判した。
『「昨日の開会式、面白かったですね～。ずいぶん寝ちゃいましたよ。驚きました。
金、返してほしいですね」と皮肉たっぷりにコメント。
TBS安住紳一郎アナウンサーから「お金払っていますか？」と問われると、「税金からいくらか出しているでしょ。金返せよ、あれ。困ったね。外国も恥ずかしくて行けないよ、おれ」と怒り心頭だった。
さらに「本音はそうでしょ？ あれ素晴らしかったですか？」と安住アナに振ると、安住アナは「なかなか制約がある中で…いろいろ演出家などが変わったりとか…」
たけし氏は「制約あった？ 要らないよ、演出家なんかあれ。（数年後に振り返ると）いかにバカだったかわかるでしょうね、日本は」と酷評した。
私はビートたけし氏が嫌いではない。むしろ好きなほうだ。彼が監督した映画「菊次郎の夏」は抒情的で美しい映画だと感動したし、あれほどの美しい映画が作れるのだから、強ぶってはいるけれど、根は優しい人だと思っていた。
しかし、彼も70歳を過ぎて、日本人を引っ張って育てていくべき存在のはずだ。人が苦労して作り上げたものを頭から否定し、茶化すような言動をとるべきではない。
もし、本当に無価値のものであるなら、どこがそうなのか、どうすべきなのかについて、役に立つことを一言ぐらいは言うべきである。
開会式の翌日産経新聞に作家の江上剛氏がコラムを書いていたが、彼の開会式のとらえ方が常識的だと思った。少なくとも私の考え方とほぼ同じであった。
冒頭だけを紹介する。
『テレビで東京五輪の開会式を観た。正直、感動した。うっすら涙も滲んだ。（中略）全体的にシンプルな演出で、震災や新型コロナ禍からの復興のメッセージが伝わる良い演出だった。スポーツの祭典にあまり華美な演出は不要だ。』
続けて江藤氏は次のように述べている。
『東京五輪・パラリンピックが問題なく終わったとしても、これで「良し」としてはならない。どこが成功したのか、どこが失敗したのか、そして、なぜこれほどまでに世論が分断されたのかを検証、総括すべきだ。それが本当のレガシーになるだろう。これからも五輪はいろいろな危難に直面するだろうから』
一部の日本人に見られるように、人が苦労して作ったものを軽々に批判し、非難するのはやめたほうがいい。
日本人はいつからそうなったのだろうか？ 日本人は一昔前は、相手を尊重し、いい面を引き出そうとし、不毛な非難は控えていた国民ではなかったか？
皆さんは開会式をどう思いましたか。
私自身は、色々考えさせられた2020東京オリンピック開会式でありました。
