新型コロナの第2期到来が報道される中で、テレビニュースで、また、新聞などで、次のような「~ぶり」の使い方が出てくるが、どうも気になって仕方がない。
- 感染者が1か月ぶりに100人を越えました。
- 感染者が40人を超えるのは3日ぶりです。
- 30代男性の感染者! 県内75日ぶりの感染福井県は12日昼、新型コロナウイルスの新たな感染者が1人確認されたと発表した。
私の感覚では、「久しぶりに友達に会った」「1週間ぶりの晴れです」「我がチームは2年ぶりに1位に返り咲いた」のように、「期間+ぶり」は、ある一定期間待ちわびてその事柄が再び実現する場合、したがって通常は、「うれしい」場合に用いられるはずである。
(1)~(3)のように、「うれしくない」場合に「~ぶり」が用いられると、落ち着かない気持ちになる。
手元にある国語辞書『広辞苑』『大辞林』『岩波国語辞典』を調べてみる。
広辞苑:
時間を表す語に付いて、時日の経過の程度を表す。(例)久しぶり、1年ぶり
大辞林:
時間を表す語に付いて、それだけの時間を経過して再び同じ状態になることを表す。(例)五年ぶりの帰郷、三日ぶりの晴天
岩波国語辞典:
(時間を表す語に付けて)それだけの時がたった後に、初めてまたそうする(なる)ことを表す(例)三年ぶりに会った
これらの国語辞書では「~ぶり」の中に「うれしい」という気分が入るか否かには言及していない。単なる「日時の経過」という説明があるだけである。
一方、NHK放送文化研究所が出している『ことばのハンドブック』P163&143には次のような説明がある。
「~ぶり」(○年~、○日~)は、「久しぶり」という言葉もあるように、ある程度の時間・日にちがたったあと、ようやくその前の状態が再び起こるときに使われるのが普通です。
(例1)「5年ぶりの再開」「5日ぶりの晴天」「1か月ぶりの雨」
(・・・中略・・・)
<注意>「~ぶり」には、語感の中に「待ち望んでいることへの期待感」を含んでいるので、「○年ぶりの大病」などという言い方は普通しません。
『ことばのハンドブック』の<注意>における説明は私の感覚・理解とぴったりである。
しかし、実際にはNHKの報道では、上記の(1)(2)や次の(4)(5)のように、「待ち望んでいないこと」にも「~ぶり」を使っていることが多い。((6)(7)はインターネットから借用。)
- 一週間ぶりの大雨です。
- 1か月ぶりに感染者数が200人を越えました。
- (大学入試の志願者は)文(93)はやや減少で、2年ぶりに減少。学科別では・・・
- この村じゃ誘拐事件は4、50年ぶりの事件だよ。
「~ぶり」の文を見ていると、「待ち望んでいること」にも「待ち望んでいないこと」にも属さない、中間的な使われ方をしている場合もないことはない。
- 久しぶりに電車に乗りました。久しぶりだったから、結構疲れが出ましたよ。
- 出産して体質が変わったのか、1年ぶりだからか、1杯で酔ってしまった。
(8)は電車に乗るのが「待ち望んでいること」ほどのことではなく、単に「長期間のあとに」程度の意味にとることができる。(9)も、お酒を飲むのを「待ち望んでいたこと」だったかどうかは文面からは判断できない。
私自身は「~ぶり」を「待ち望んでいたこと」の場合にのみ使ってほしいと思っているが、世の中は厳密に線を引いていないのであろうか。「~ぶり」が期待感を含んだ表現である以上、ぜめて「1年ぶりの大豪雨で、川が氾濫している」のような、明らかに待ち望まれていない事柄には「~ぶり」は使わないでほしいと思うが、皆さんはいかがだろうか。