77)テレビのフリガナ

大雨が続いて各地に豪雨被害が出ている。災害国日本では災害がしょっちゅう起こっているので、そういう時はテレビニュースにかじり付いていることが多い。ニュースといえば、私達の世代はやはりNHKである。

今回は鹿児島と熊本での災害が大きかった。特に熊本では多数の死亡者も出た。NHKはいつもの番組を変更して、一日中災害状況を中継で、また録画で送り続けている。

最近はテレビに字幕が、即座に、また丁寧に出るので、音を聞きながら目で情報を確認することができる。熊本の被害状況を伝えているとき、感じることがあった。

豪雨でいくつもの川が警戒水域を越え、氾濫した。そのたびに、ニュースは地域の名前を、町・村の名前を、また川の名前を伝える。テレビの画面には川の名前とともに降雨量が出ることもある。ところが、私はそれらの名前の半分しか読めない。アナウンサーの声が入るので、声と字幕が結び付けば分かるのだが、常にそううまく行くことはなく、字幕だけが画面に残っていることが多い、

この字は何て読むのだろう? この地域の名前は? この川の名前は?

八代市水俣市本渡市山鹿市牛深市、などなど

球磨川、川辺川、万江川、筑後川、氷川、杖立川、などなど

 

八代市」は歌手の八代亜紀が有名だから、「やしろし」と読んでしまうし、「水俣市」は水俣病で有名でも、漢字だけ見れば「みずまたし」と読みそうである。「川辺川」は読めるかもしれないが、「万江川」は読みにくい。たぶん「まん」と「え」しか読めないから「まんえ」とは読めても、正しいかどうか確信がない。「筑後川」も「ちくご」か「つくご」か、ふっと迷ってしまう。「氷川」は氷川きよしが有名だから誰でも読めそうだが、もしかしたら、「こおりかわ」かもしれない。

つまり、NHKに言いたいことは、わかりにくい地名や山・川名にはフリガナ(ルビとも言う)を付けてほしいということだ。

都会の名前がどんどん無個性の名前になっていく一方で、地方には昔ながらの、情趣に富んだ名前が残っている場合もある。それらを正しく知っておくことは、日本人にとっての常識でもあり教養でもある。子供達にとっても、「へえー、こんなふうに読むんだ」ということを知る機会でもある。特に年々増えている来日外国人にとっても、フリガナがあるほうがずっと馴染みやすい。

災害時に各地方の名前を知ることができるというのは、それはちょっと悲しい、皮肉めいたことではあるが、ぜひフリガナを付ける手間をとってほしい。

 

私は長く外国人に対する日本語教育に関わってきて、その間に日本語教科書を作成したことがある。漢字が読めない外国人学習者対象であるから、フリガナを付けることは必須である。

どの単語を漢字にするか、もし漢字にするなら、どの単語(漢字)にフリガナを付けるかはいつも問題になる。また、フリガナを漢字の上に付けるか、下に付けるかも問題になる。

印刷の技術上の問題が関わっているのか、ほとんどの教科書ではフリガナは漢字の上に付いている。漢字を覚えるためには、漢字の下にフリガナが来たほうが効果的である。学習者の目には最初に漢字が飛び込んできて、次にフリガナが来たほうが、漢字の記憶が強くなるからである。

 

テレビに文字テロップを入れる場合、フリガナを付けるのは難しいのだろうか。時間がかかるのだろうか。フリガナが入るスペースを設けねばならないという手間もあるし、それによって行数も変わり、文字数も制約を受けるのかもしれない。

フリガナを入れると、画面が煩雑になって、読みにくいということもあるのかもしれない。しかし、ぜひ検討してほしいと思う。レイアウトやデザイン、色などで、読みやすくすることもできるはずだ。印刷技術の向上で、スペースを変えることなくフリガナが付いているのも見たことがある。

日本人にも外国人にも、地方の川や山の名前が読めて、一つでも覚えられれば、より親しみが深まるのではないかと思う。(フリガナを漢字の上に付けるか下に付けるかは特にこだわらない。)

土曜日午前8時から放映の「ウェークアップ!」ではフリップの地名にすべてフリガナが付いていた。週一回の番組なので、それができたのかもしれないが、できるだけ多くの番組で、特に報道番組でフリガナが施されることを願っている。